男子73キロ級では世界王者の橋本壮市(26)が決勝で66キロ級で五輪2大会連続銅メダルの海老沼匡(28=パーク24)に優勢勝ちし、2年連続3度目の優勝を果たした。

 尊敬する海老沼との対決は橋本に軍配が上がった。序盤から橋本は得意の組み手争いで優位に立ち、試合開始1分46秒に腰車で技ありを奪い、優勢勝ち。「優勝出来たことはうれしく思う。海老沼さんとは毎日、練習しているので正直やりづらかった。気持ちで負けないように意識した」と振り返った。

 苦難を残り越えた。2月に都内の国立スポーツ科学センター(JISS)の宿泊施設へ夜間に無断で知人を招き入れたとして、半年間、JISSと味の素ナショナルトレーニングセンターへの立ち入り禁止、大会や合宿への自費参加など6項目の処分を受けた。高校生以来となる約6ミリの丸坊主にして、両施設以外での稽古を続けた。所属先が主催する小学生向け柔道教室にも参加して改心。

 「柔道界全体に迷惑をかけてしまった。不安やプレッシャーもあったけど、自分を見つめなおす機会になった。今は何に対してもしっかりと考え、大人らしい生活をして、子どもたちのよい見本となる柔道家になりたい」としみじみ語った。

 この日の試合では指導を受ける度に主審へ一礼してから、試合を再開する行動での変化も見られた。男子の井上康生監督からも「反省して畳の上で恩返ししろ!!」と叱咤(しった)された。

 29日には無差別で争う全日本選手権(日本武道館)に初出場する。東海大3年の時に81キロ級から73キロ級へ転向し、あえて五輪王者の大野将平らがいる「厳しい道」を選んだ逆境に強い26歳。「けがのリスクを考えていたら試合できない。バチバチ重量級を倒していきたい」と、3週間後に迫る大舞台に胸を高鳴らせていた。【峯岸佑樹】