いやいや、無理無理。入江陵介(29=イトマン東進)が、スタート器具の不具合に困惑した。

男子100メートル背泳ぎ予選でスタート姿勢で足をかける器具が動く不具合が発生。53秒38で準決勝進出も改善を訴えた。他の組で連発となって、たった1人でタイムを計測するケースが2件も発生。しかも大会側は準決勝での同器具の使用に関して、二転三転する混乱ぶり。入江は準決勝6位で23日の決勝進出を決めたが、世界一を決める大会で、選手たちが振り回された。

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入江が、取材エリアで困惑した。「よくわかんないです。(足場が)落ちるんです。力を加えたらズルンと」。問題は、スタート台の下に設置されたバックストロークレッジに起こった。背泳ぎのスタート姿勢の際に両足をかけるところ。仕切り直しで準決勝進出も、29歳は改善を訴えた。

「今までこういうことはないので、改善してほしい。この大会でひたすら起きているのは、機械のズレがあるからだと思う」

入江はレース前に器具の固定を確かめるという。予選前も、がちゃがちゃと動かすと係員に「ひっぱるな」と言われたという。「いやいや、すべったらどうする?」とびっくり仰天だ。

予選は不具合の影響で、1人で泳ぎ直すケースが2例。準決勝は通常の16人ではなく18人となった。選手に責任はないが、泳ぎ直しはスポーツの根幹である「公平性」を揺るがす。

大会側は、準決勝の2時間前に同器具を使わないと決定。入江は「アメリカのコーチが抗議していた」。結局1時間後に同器具を最も低い位置に固定して採用した。入江は53秒13で決勝に進出。「いつもより低い位置だけど、皆同じ条件だったので」と苦笑いした。

同器具は選手が高さを調節でき、タイムにも影響がある。入江は「大きな気持ちをもってやりました」といったが、二転三転した大会側の混乱はレースを前にした選手に余計な負担をかけるもの。入江によれば、23日の決勝も固定した状態で行われる見通しという。