遠征先のマレーシアで13日早朝に交通事故に遭い、療養中のバドミントン男子シングルス世界ランキング1位の桃田賢斗(25=NTT東日本)が、早ければ2月3日からの日本代表合宿(都内)に参加する。20日、遠征先のインドネシアから帰国した日本代表の朴柱奉監督(55)が都内で会見に応じ、その可能性を示唆。同監督は事故直後の桃田とのやりとりも明かし「僕は大丈夫ですか?」などと尋ねられたという。予定通り3月の全英オープン(11日開幕・バーミンガム)での実戦復帰を目指す。

13日早朝、マレーシアの首都クアラルンプールの高速道路。桃田らが事故に遭ったという衝撃の一報を受け、バスで現場に到着した朴監督の目の前には、大型トラックに衝突し運転席がつぶれたワゴン車と、路肩にぼうぜんと座り込む桃田の姿があった。

すでに事故発生から約1時間。血を流し、放心状態の桃田。生きていてくれた愛弟子の姿を見て名伯楽は涙した。「大丈夫か」と声をかけ、自分の上着をそっと掛けて付き添った。桃田は「僕は大丈夫ですか? バドミントンは大丈夫ですか(=できますか)?」と聞いてきた。世界ランキング1位、東京オリンピック(五輪)金メダル最有力候補という現実から、海外で予想もしない状況に追い込まれた教え子の心の叫び。優しく「大丈夫」と答えるしかなかった。

ただ、桃田は強く、たくましかった。その後、インドネシアに向かう他の日本代表選手を空港まで送り届けた朴監督は、病院で付き添った。顔面3カ所の裂傷などの治療を終えていた桃田は「治りますかね。またハンサムな顔に戻りますか」と冗談を飛ばした。これに、朴監督はホッと胸をなで下ろした。

今後について、同監督は「大丈夫であれば、2月3日の合宿から参加させようと思う」とした。所属先と相談しながらになるが、問題がなければ代表合宿に招集する。練習とリハビリを同時に行いながら、3月11日開幕の全英オープンでの復帰を目指す。所属のNTT東日本広報によると、全身打撲との診断も受けた桃田は現在国内で療養中。練習復帰については未定だが、連絡は小まめに取り合っており20日には抜糸が終わったとの報告があったという。

帰国するまで同監督は、一足早く15日に帰国した桃田に「ゆっくり検査してリカバリーするように」などとLINE(ライン)でコミュニケーション。桃田からは「もう1回頑張ります」と返事が届いた。「けがが軽くて、本当に良かった。順調にいっている。メンタルケアをしっかりして、3月の全英オープンを目標にしたい」。同監督も、前を向いた。【松熊洋介】

朴監督と事故現場に駆けつけた日本代表の中西洋介コーチ(事故後、車に乗ると、その光景を思い出すといい) 桃田にもフラッシュバックがあるかも。