新型コロナウイルスの脅威が、スポーツ界を直撃した。感染による肺炎拡大を受けて、30日までに予定された大会の中止、延期が次々と決定。

さらに、ネットなどで「東京五輪中止」のニセ情報まで流れた。大会組織委員会は「事実ではない」と否定したが、一時はツイッターのトレンド(流行)になる騒ぎとなった。

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誤った情報の発端は、ドイツのDPA通信が29日に報じた「国際オリンピック委員会(IOC)と世界保健機関(WHO)が新型コロナウイルス対策を協議している」だった。これを同日夜に紹介した日本の情報サイトの「東京オリンピック中止か」という見出しが、拡散したようだ。

IOCとWHOの協議はあくまでも「感染症対策」のためで、中止や延期を話し合ったものではない。1896年の第1回アテネ大会から数えて東京で32回目を迎える夏季大会だが、これまで中止されたのは3大会だけ。16年ベルリン大会が第1次世界大戦で、40年東京大会と44年ロンドン大会が第2次世界大戦でそれぞれ中止になったが、戦争以外での中止はない。

もっとも、選手だけでも1万人、関係者や観客を含めれば数百万人が1都市に集まる五輪は、感染症のリスクが高いのは事実。これまでも、IOCとWHOは連携して対策を講じてきた。感染スピードや感染者数が収束までに半年以上かかった03年のSARS(重症急性呼吸器症候群)以上といわれるだけに、五輪本番への影響も心配になる。

組織委は「中止の事実はない」としながら、問い合わせには「安心で安全な大会開催に向けて感染症対策は重要と考えております。東京2020は感染症全般に関して、その兆候を監視している関係機関と密接に連携し、必要に応じて対策について検討を進めていく所存です」。大会の開催に向けて、連日報道される情報を注視している。

◆五輪と感染症 18年平昌五輪(ピョンチャンオリンピック)では開幕直前に警備員が集団でノロウィルスに感染。1200人が隔離される事態に発展し、選手からも感染者がでた。16年リオデジャネイロ夏季大会では南米で猛威をふるったジカ熱のために、大会延期や開催地変更を求める声が続出。WHOの専門家チームは5月に妊婦の渡航を控えるよう勧告したが、開催自体は感染拡大のリスクが低いという判断で変更されることはなかった。