女子バイアスロンで18、19年世界ユース選手権出場の小足さくら(19=北海道東神楽町出身)が、コロナ禍でも予定通り、今秋からフィンランドに拠点を移すことになった。過去の日本のオリンピック(五輪)出場者は男女通じて全選手が自衛隊所属だが、強豪国で腕を磨き、新たな形で五輪出場を目指す。

小足は海を渡る日を待ち焦がれる。新型コロナウイルス感染拡大の影響で取り巻く環境は変わったが、3月の名寄産卒業時に決めたフィンランドでの武者修行を、決行する。「五輪がヨーロッパでやるならなおさら。日本の雪質とヨーロッパの雪質は違う。少しでも環境に慣れたい」。見据えるのは、イタリア開催の26年冬季五輪。いまは渡欧に向け、東神楽町の実家で農業の仕事を手伝いながら、陸上トレーニングに励み、海外生活用に自動車教習所にも通っている。

北海道から冬季五輪選手輩出を目指す北海道タレントアスリート発掘・育成事業(TID)の1期生。距離スキー全国中学3位の実力もあったが、19年世界ユースは71位。「海外の選手は銃の動作も速いし、銃を打った後の弾痕もまとまっている。その差は感じた」。国内の自衛隊ではなく、競技の盛んなフィンランドから五輪を目指す道を選んだ。

留学予定地のボカティは同国の冬季競技の拠点で、ジャンプや複合の日本代表合宿も行われている。小足も中2の冬から「10回近く」訪れている。バイアスロンの環境も整備されており「射場とコースが一緒になって、より競技に似たような練習ができる」。ノルディック複合で日本代表のコーチを務めたユルキ・ウオテラ氏らに師事し、欧州各国の選手たちと一緒に汗を流す。

高校3年夏に判明した鉄欠乏性貧血の症状は緩和。1年間はノエビアグリーン財団のスポーツ助成金を受けることになるが、金銭面や健康面を気遣い支えてくれた家族には「すごく感謝している」。目標は冬季五輪出場。「今のレベルで22年北京はまだまだ。26年イタリア、(招致を目指す)30年札幌を目指したい」。道を開き、世界と戦う。【浅水友輝】

◆バイアスロン競技事情 日本では銃刀法により銃の所持資格が必要なため、競技者のほとんどが自衛官。20歳未満は実弾の使用ができず、レーザー銃を用いる。64年インスブルック大会から派遣している五輪代表選手は、18年平昌五輪まで男女延べ76選手全てが陸上自衛隊関係者。06年トリノ五輪代表の大高友美は民間企業に所属して10年バンクーバーを目指したが、五輪切符を逃している。

<06年トリノ五輪代表 鷹栖高・大高友美教諭の話>

日本では限られた場所での練習で、射撃でも道内では真駒内の自衛隊敷地でとなり、申請も必要になってくる。走力が伴わないといけないのでフィンランドなど欧州の環境は総合的に良い。金銭的な面もあるが海外に行けるのであれば日本より練習環境は整っている。日本だと自衛隊という選択肢しかほぼない。

(自衛隊所属のトリノ五輪後に民間企業で挑戦したが)銃の免許の取得もしないといけないし、銃の保管や練習環境も民間は自分たちでやらないといけない。ゼロどころかマイナスからのスタートだった。日本国内だとリスクはあるが、さくらが海外で練習して日本の選考会で勝ち取るのであれば拠点を海外に置くのは選択肢。いろいろなリスクを分かった上で、1人でも頑張ってやりたいという気持ちの部分が今後強みになっていく。少しでも支えになっていきたい。

◆小足(こあし)さくら 2001年(平13)4月24日、北海道東神楽町生まれ。東神楽小1年で距離スキーを始め、東神楽中1年からはテニスも始める。距離スキーでは中3の全国中学3キロフリー3位、3キロクラシカル10位。バイアスロンの世界ユース選手権には名寄産1、2年時に出場。趣味は映画観賞。好きな俳優は間宮祥太朗。視力は1・0。右利き。家族は両親と兄3人。158センチ、53キロ。