冬季オリンピック(五輪)2連覇王者で、約10カ月ぶり実戦復帰の羽生結弦(26=ANA)が5年ぶり5度目の優勝を飾った。フリーでは4回転ジャンプ4本に成功し、初披露の「天と地と」のプログラムの世界を体現し、215・83点。合計319・36点の圧勝だった。

試合後の会見では、新型コロナウイルスの感染が拡大する中での苦悩を語った。

-苦しい時期があったのか

羽生 どん底まで落ちきって。自分がやっていることが無駄に思える時期がすごくあって、トレーニングとか、練習の方法とか、自分で振り付けを考えないといけないプレッシャー、自分でプロデュースしないといけないプレッシャー、そもそもクワッドアクセル(4回転半)って跳べるのかとか。でも僕の中で入ってくる情報はみんなすごい上手で、みんなうまくなっていて、1人だけ取り残されているというか。1人だけ、ただただ暗闇の底に落ちていく感覚があって。1人でやるのもう嫌だ、やめようって思ったんですけれど。「春よ来い」と「ロシアより愛を込めて」をやったときに、スケート好きだなって思ったんです。だったらもうちょっと自分のためにわがままになって、皆さんのためだじゃなくて、自分のために競技を続けてもいいかなと思ったときが前に踏み出せたときですかね。トリプルアクセル(3回転半)さえ跳べなかった時期もあったので、そこから比べたら、今は成長できたのかなと思います。

-アクセルすら跳べなくなった時期は

羽生 結構長くて、その期間。本当、10月の終わりぐらいまでありました。ただそこから少しずつ、コーチたちにメールして、ビデオを送って、アドバイスをもらったり頼ることができはじめて。ライブで会話できないし、自分の感覚と今までの経験で練習を構築するしかないんですけれど、そういう意味ではやっとなんか、本当にやっと自分がここまでスケートをやってきて、鍵山選手、宇野選手、技術的にうまくなっていって、年寄りみたいな感覚が自分の中であって。クワッドアクセルを練習すれば、どんどん他のジャンプが崩れていく。そういう悪いスパイラルに入っていった中で、けがしたこと、うまくできたこと、そういったことを消化して、ベテランらしく、いい演技ができるようになったと思います。