昨年王者の山隈太一朗(21=明大)が連覇を逃し、悔しい3位となった。

ショートプログラム(SP)3位で迎え「自信がある」と話していた新曲「ゴッドファーザー」。冒頭のトリプルアクセル(3回転半)を出来栄え点(GOE)1・07の質で決め、続く3回転サルコーも降りた。

「アクセルはSPもフリーも、すごく良かったですね。練習よりも良いものが出ました。アクセルは今、自分の中で一番自信があります」

幸先いい出だし…と思いきや、鬼門が待っていた。3本目の3回転ルッツ。回転がやや足りず、着氷が乱れて大きく減点された。ここから崩れ、後半は信じていたアクセルまで狂い、トリプルではなくダブルになった。そして3回転フリップは転倒。最終的に、連続ジャンプを1本も入れられなかった。

「ダメっすね…シンプルに。6分(直前練習)がすごく良かったので、自分に期待してたんですけど」

嫌な記憶がよみがえる。昨年末の全日本選手権。この東京ブロックで優勝するなど順調に予選を通過し、迎えた年末の大舞台のSPで26位に終わった。まさか-。30人のうち上位24人が進むフリーにすら届かなかった。6人だけの、いわゆる「ショート落ち」に自分が沈んだ。

そこでミスが出たジャンプが、この日と同じルッツとフリップだった。

「全日本のSPのルッツでこけて、あそこから歯車がかみ合わなくなった。そこからルッツとフリップで失敗して、苦しんできて。その嫌な経験がフラッシュバックしてくるというか。それを今季しっかり払拭(ふっしょく)したくて、ここに来たんですけど。なかなか手ごわくて。得意なはずだったアクセルまで巻き込んで全部ダメになった。ルッツ、フリップの負の蓄積が大きい」

大会2連覇は果たせず。昨年はSP5位からフリーで巻き返して優勝したが、今年はSPもフリーも3位と振るわなかった。合計153・60点。恐れるものがなかった3年前の全日本選手権で記録した、初出場で打ち立てた自己ベストの212・23点を60点ほど下回っていた。

ただ、原因は自覚している。負の連鎖は自ら断ち切るしかない。

「トラウマが動きにズレが出る要因であれば、練習で体にリズムを刻み込まないと。最初のアクセルをキレイに降りられたので、実は体のキレはいいんです。ほかのジャンプも跳べるということ。言い訳はできない」

幸い、まだ10月だ。次の実戦であり、全日本の最終予選でもある東日本選手権(今月29~31日)まで時間はある。

「東(日本)ではトラウマに負けないように、練習から成功体験を1つでも多くしたい。年末にある大事な試合に向けて」

大事な試合とは、今年は全日本だけではない。大学生の世界一を決める冬季ユニバーシアード・ルツェルン大会(12月11~21日、スイス)の日本代表に、先月の選考会を勝ち抜いて選ばれた。

「ユニバーシアードは目標にしていたところ。しっかりトラウマに負けずにベストを尽くすために。そのステップと位置づけて東では頑張りたい。できなかったジャンプのリズム、つなぎの練習が不足していたなと思うので、得た課題を持ち帰って練習したい」

3週間で、どこまで立て直せるか。氷の上で自信を取り戻していくしかない。【木下淳】