22年北京オリンピック(五輪)の代表最終選考会を兼ねたフィギュアスケート全日本選手権の男子フリーが26日、決着する。冬季五輪2連覇の羽生結弦(27=ANA)は25日、さいたまスーパーアリーナで行われた公式練習に参加。世界初の成功を目指し今大会、試合に初めて投入するクワッドアクセル(4回転半)の練習に再び取り組んだ。その大技を組み込んだ2季連続のフリー曲「天と地と」も披露した。

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もう日常のごとく羽生が4回転半の準備を進めた。「もちろん挑戦するつもり」とフリーで投入することを宣言した大技に、SPを挟み中1日で取り組んだ。緩やかに、体を反転させる動きから前向きに踏み切った。この日は10回トライ。1本目が最も惜しい両足着氷で、あとは回転の抜けが6回、転倒が3回だった。

2日前は「軸作りを一番大事にした。回転を10割でかけていない」。そのため回転は足りないものの、ほぼ片足で着氷した。一転、この日は力がこもり、回転を速めているようだった。「10割、11割の力では、こめてしまう」。だから1本目が最も惜しく、重ねるにつれて転倒や抜けが多かったとみられる。その中で「SP後の練習、フリー当日、本番で降りるかもしれない。望みを捨てずに、諦めずに、しっかりやっていきたい」。その言葉通り挑戦の姿勢を崩さなかった。

この後は、初めて4回転半を組み込んだ版のフリー「天と地と」を披露した。冒頭で跳び、バランスを崩して転倒。一方で挑戦によるミスは引きずらず、4回転サルコーや演技後半の4回転トーループ2本など6本のジャンプを降りた。消耗の激しい大技に挑んだ後も崩れない。究極の構成を目指す準備が整っている。

4回転半は「軸の取り方が非常に難しい」と言う。その習得過程で全てのジャンプに好影響が出た。「ほかのジャンプも(軸を)ここに入れることが正解だとか、きれいに跳べた時はアクセルと意識が重なり合って、だんだんうまくなってきた」。自信は強まった。

SPは、非公認ながら今季世界最高の111・31点で首位発進。2年連続6度目の優勝と北京五輪代表内定がかかるフリーでは、勝つだけでは満足できない。さあ、世界初4回転半成功へ。午後9時3分から登場する羽生の最初のジャンプに目を凝らせ。【木下淳】

◆羽生の4回転半VTR 初めて公の場で披露したのは19年GPファイナル(トリノ)のフリーに向けた公式練習。ジャンプを指導するジスラン・コーチがパスポートの盗難により到着が遅れ、不在の中、3回挑んですべて転倒した。国内初披露したのは21年世界国別対抗戦(大阪)エキシビション練習。12回挑み着氷はならず。半分は転倒していたが、会場からは拍手が送られた。今大会の23日の公式練習では、3回トライし、最後は回転不足ながら片足で着氷した。

◆羽生のクワッドアクセル(4回転半) 6種類ある4回転ジャンプの中で唯一、成功者がいない現在最高難度のジャンプを世界で初めて跳ぼうとしている。その基礎点は国際スケート連盟(ISU)が定める中で最高の12・50点。同ルッツの11・50点を上回る。3回転半は8・80点。唯一、左足で前向きに踏み切るジャンプで、降りる際はほかと同じ後ろ向きのため半回転多い。幼少時から「アクセルは王様のジャンプ」と都築章一郎コーチの指導を受けてきた影響も大きい。羽生はトーループ、サルコー、ループ、ルッツを習得済み。ループは16年に自身が世界で初めて成功した。