令和の三四郎が体重75キロ差の逆境に打ち勝った。柔道の全日本学生優勝大会が26日、東京・日本武道館で行われ、東海大の95キロ村尾三四郎(4年)が国士舘大の170キロ斉藤立(3年)を破って6連覇に導いた。体重無差別7人制の決勝は1-1で並び、代表戦に突入。耐えに耐えた村尾が16分18秒、大外刈りをすかして転ばせ寝技に移行し、上四方固めで一本勝ちした。

勝った方が日本一の代表戦。4日前に起用を伝えられた主将の村尾が、予想通り斉藤を迎え撃った。相手は単に大きいだけでなく、五輪2連覇の斉藤仁さんの次男で4月の全日本選手権を20歳で制した立。最新の日本最強に対し「一発で投げたり、運良く転ばす展開には期待できない」と最初はビクともしなかったが、大内刈りなどで崩しながら試合中に攻略法を探った。

中学時代から知る日本代表の後輩と公式戦では初対戦。「削って削って。最後は立に引き手を切られなくなった」とスタミナ勝ちを確信した。先に指導2つを取られる劣勢も、延長戦で指導2を奪い返す。最後は寝技で仕留めた。3年ぶり有観客の武道館がどよめいた。「心に残る試合になった」。表彰式後も村尾の手は震えていた。体重ほぼ2倍の相手に出し尽くした。

東海大の上水監督が「こんな展開は1%も考えなかった。夢物語でも厳しい」と驚いた勝利。OBで00年シドニー五輪100キロ級金メダルの井上康生氏からは「歴史に残る試合」と称賛された。90キロ級では24年パリ五輪を目指す期待の星。近年は伸び悩んだが、学生柔道史に刻んだ伝説を転機に再浮上する。【木下淳】

○…斉藤が号泣した。全日本王者として国士舘大を15年ぶり優勝に導くはずが、決勝の次鋒戦で引き分け止まり。同期の大将高橋が0-1から残り5秒で代表戦に持ち込んだが、後を託された決戦で村尾に屈した。試合後はショックを隠せず「すみません」とだけ話して会場を後にした。初優勝した4月の全日本選手権で右膝を痛め、本格稽古再開は大会の2週間前。吉永監督は「最後はスタミナが切れたのかな」とかばった。

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