日本オリンピック委員会(JOC)の山下泰裕会長(65)が30日、都内で定例会見を開き、東京オリンピック(五輪)・パラリンピック組織委員会の高橋治之元理事(78)が受託収賄容疑で逮捕されたことに言及した。

「非常に残念。全体のイメージが損なわれてしまったことは事実だが、東京大会へ懸命に臨んだアスリート、活躍を望んだ国民、多くの関係者を失望させてしまうことがあってはならない。全体のガバナンス(組織統治)が失われることがないよう、同じ過ちを繰り返さないよう、透明性、公平性を保てるように覚悟、決意を持って取り組んでいく」と力を込めた。

2030年の冬季五輪・パラリンピック招致を札幌市とともに目指しており、年内にも開催地が国際オリンピック委員会(IOC)から一本化される可能性がある。その中で、東京大会の開催費用が招致段階から大きく膨らんだことへの懸念が札幌市民にあることにも触れた。

「地元負担が増えるのでは、という不安があるので盛り上がらないんだと思う。大会経費も含めて丁寧に説明し、理解していただけるようにプロモーション委員会とやっている。招致を取り巻く環境、疑念があることを十分に理解した上で、払拭するために組織のあり方を決定していく。招致が決まった場合は、同じ過ちを繰り返すことは許されない」と述べた。

機運醸成には「特効薬のようなものはない」とし、盛り上がらないまま招致だけが決まってしまうことへの心配には「盛り上がってこないと(招致自体)厳しい。状況は楽観視できるものではない」との認識を示した。

札幌市の秋元克広市長とともにスイス・ローザンヌのIOC本部を9月に訪問することも報告した。

「秋元市長から、今年9月に札幌市と(ドイツ)ミュンヘン市の姉妹都市が50周年を迎えるに当たり、その前にIOCを訪問したいと意向を伝えられた。私も訪問する方向だが、どのような方と面会するかを含めて調整中。札幌市の状況を聞かれれば、説明することもあるかもしれない」

25日の理事会では、札幌招致を継続するかどうか議論されたが、引き続き進めていくJOCの従来方針が再確認された。この日も「一部の理事から継続するかどうか考えた方がいい、との意見も出たが、その方も含めて全員が前向きに取り組むことで一致した。最後までやる。全力を尽くす」と撤退は否定した。

今回の汚職で強まった五輪への疑いの目に、JOC会長としてどう答えていくか。資料の開示請求なども考えられるが「正直に言って、疑念、逮捕、そういったものをどう晴らすか私に直接できることはない。力不足もあるが、私には疑惑を解明できない」と理解を求めるしかなかった。

30年の冬季五輪はIOCが12月にも最優先候補地を絞り込み、来年5~6月の総会(インド・ムンバイ)で正式決定する見通しだ。