驚異の新星が誕生だ。19歳で世界4位のカルロス・アルカラス(スペイン)が、自身初の4大大会優勝に加え、史上最年少での世界1位が確定した。

ノルウェー男子史上初の4大大会優勝に挑んだ同7位のカスパー・ルード(23)に6-4、2-6、7-6、6-3の4セットで勝ち、68年オープン化(プロ解禁)以降、サンプラス(米国)に次ぐ大会2番目の若さでの優勝となった。アルカラスは、12日に発表予定の最新世界ランキングで、01年11月に20歳9カ月で1位になったヒューイット(オーストラリア)を抜き、史上初めて10代での世界1位となる。

最後のマッチポイント。こん身の力でたたき込んだサーブが、ルードのリターンをはじき飛ばした。そのまま、コート上で滑るように足を投げ出し、両手で顔を覆い、アルカラスは4大大会初優勝と最年少世界1位を全身で喜んだ。

「感情がこみ上げて、うまく言葉にできない。夢みたいだ」。タフでいかつい表情が、柔和な笑顔になり、涙がこぼれた。「努力が実った。やってきたことがかなった」と、世界の頂点に立った。

攻守のメリハリがきいたストロークに、的確なネットプレー。サーブもコースと回転を組み合わせ、時にはスピードも出す。大事な局面をとらえる嗅覚に優れ、たぐいまれなる集中力で数少ないチャンスをものにする。

それを支えるのが、19歳という若さから来る無尽蔵のスタミナだ。今大会、4回戦から準決勝まで、3試合連続で5セット試合を戦い抜いた。全7試合で、合計23時間39分の激闘は、記録が残っている中で、4大大会最長時間となった。さすがに、第2セット、足が動かなくなり「今はちょっと疲れている」と、笑わせた。

大好きな映画は「ロッキー」。その主人公のように、タフで、決して諦めないプレースタイルで、4大大会本戦に挑戦することわずか8度目で初優勝だ。新たな時代が、ついに幕を開けた瞬間だった。

◆全米オープンテニスは、8月29日から9月12日まで、WOWOWで全日生放送。WOWOWオンデマンドでも全コートでライブ配信される。