昨季の世界選手権で初優勝し、第2戦スケートカナダも制した宇野昌磨(24=トヨタ自動車)が91・66点の2位で出た。
冒頭、課題の4回転フリップを美しく決めた一方、続く4回転トーループで転倒。首位は逃したが「悪い印象のSPではなかった」と納得した。
晴れ晴れした表情の裏には「初めて『時間ある? 話し合いたい』と言われた」というステファン・ランビエル・コーチとの、臨時ミーティングがあった。
前段として、前日17日の公式練習では自身に対し、いら立っていた。16年に自らが世界で初めて決めた4回転フリップ。その修正に波があったといい、打ち明けていた。
「練習を通して意味がないなと思いながら、ムカつきながら、ずっとやっていました。ただうまくいかないだけなら“やりがい”ですが、トライした技術が全く反映されないことに、ものすごく、いら立ちを感じています。フリップは面白くないです、やってて」
その後だった、ランビエル氏に呼ばれたのは。
「レストランで10分間、話をしました」と宇野。授かった言葉は、こうだったという。
「完璧は目指すものではない。やってきたことをやろうとする、その1つ1つの先に完璧がある」
宇野の胸にスッと入ってきた。落ちてきた。「自分でも分かっていたつもりだったけど、うれしかった。向き合えた」。その成果が冒頭、出来栄え点(GOE)3・93(速報値)を稼いだ4回転フリップだった。
続く転倒がありながらシーズンベストは更新した。首位は96・49点の山本草太(中京大)に譲ったが、スッキリしている。「カナダ大会と比べ、終わった後の気持ちも内容も良かったと思っています。今はプラスな気持ち。やってきたこと1つ1つの気持ちで挑みたい」と翌19日の反攻のフリーへと目を向けた。【木下淳】