見る者を魅了して、ロコ・ソラーレが再び国内頂点に立った。

開幕前も、そして大会中も、ロコ・ソラーレの選手たちは「優勝を目指す」「連覇を狙う」という言葉を1度も口にしなかった。開幕前日の会見でスキップの藤沢五月(31)は「メディアの皆さんは、選手に優勝ということばを言わせたがると思うんですが」と、にこやかに笑いつつ「結果にフォーカスせず、別の部分で集中している。自分たちらしくやることが大事」。取り組んできたことを発揮すれば、結果は後からついてくるとの思いを口にした。

昨年の北京五輪銀メダルをはじめ、国内外で輝かしい成績を挙げてきた。重視してきたのは、結果以上にその内容。サードの吉田知那美(31)は、「こだわっているのは、自分たちのやりたいカーリングで勝つこと」と言い切る。

勝利を重視しての安全策を取らず、あえて高難易なショットを選ぶこともある。吉田知は「アスリートとして、そしてエンターテイナーとしても、見ていて楽しく、やっていて楽しいカーリングを求めている」。磨き上げてきた技術を、氷上で表現することに最大の喜びを見いだす。

1次リーグ首位対決となった中部電力戦の第6エンドには、藤沢が鮮やかなヒットアンドロールを決めた。ほかにもチーム一体となってスーパーショットを繰り出し、何度もファンを沸かせた。

吉田知は優勝直後にあらためて「私たちは勝つことを目標に設定しているチームではない。勝つことをゴールにしちゃうと絶対に終わりがくる」。競技者である以上、勝利を目指すことは当然だとも口にしたうえで、「成長することを目標にチームが存在しているから勝ち続けられるし、成長し続けることができる」と力を込めた。

夢だったグランドスラムの優勝トロフィーを手に帰国した。場合によっては、直後の国内大会でモチベーションが低下しても不思議ではないだろう。それでも「成長したい」「高いパフォーマンスを見せたい」という意欲にあふれていたからこそ、気持ちが切れることはなかった。

勝利の喜びも、敗戦の悔しさもすべて糧とし、試合を重ねるごとに強くなっていった。それゆえ、最後の大一番を終えた後のチームは充実感に満ちていた。吉田知は誇らしげな表情で振り返った。「今大会、いちばん良いパフォーマンスを発揮できたのは決勝」。ロコ・ソラーレの成長曲線は、果てなき上昇カーブを描き続けていく。【奥岡幹浩】