初出場の渡辺倫果(20=TOKIOインカラミ/法政大)は、まさかの60・90点となった。

冒頭、果敢に挑んだトリプルアクセル(3回転半)で転倒。さらに次の3回転ルッツも跳べず、1回転=無得点になってしまう大きなミスが出た。

「正直、現地に入ってきてからショートの調子が、そこまでいいものではなかった。良くも悪くも練習がそのまま本番に出たなっていう感じ。ショートのルッツを修正し切れなかった。ただ、拍手だったり、温かい声援は本当にありがたかったです」

演技後半の3回転ループに3回転トーループを付けて2連続とし、リカバリーしたものの、フィニッシュ直後から下を向いて悔しそうな表情を見せた。

飛躍したシーズンの集大成にするはずだった。今季はグランプリ(GP)シリーズ第2戦スケートカナダで初出場V。GPファイナルにも出場し、世界選手権の代表にも初めて名を連ねた。

責任と誇りを胸に、スピンとステップは最高評価のレベル4でそろえるなど準備してきた細部では技術力の高さを見せたが、キス・アンド・クライでは大汗をぬぐいながら、淡々とスコアを受け止めた。

「(初出場のSPを終え)悔しい思いはあるんですけれど、ジャンプがはまらなくても最後まで諦めずにできた。ある意味、複雑な気持ちです。いつか、この経験を生かせる時がくればいいなと。アクセルの質自体は、転んでしまったんですけど悪くなかったのでフリーで頑張りたい。明後日は笑顔になれるように」

取材エリアには涙をふいて現れた。涙の意味を問われると「目標にしていたことができなかった悔しさですね」と答え、もう切り替えるしかない中で、持ち前の明るさで開き直った。

「獲物を見つめる虎のように、虎だかチーターだか分かりませんが、そうなれるように頑張ります。(今季は)スピード出世が過ぎる。今まで新人というか、ペーペーだったのが、いきなり部長みたいな。1年半で部長はなかなかないと思うんですけど、見たかった景色が早く見られている。経験は大切。生かして、いつか夢を果たせるように」

切り替えはできたか? と聞かれると「はい」と答えてフリーへ目を向けた。

坂本花織、三原舞依、渡辺倫果が出場/世界選手権女子SP詳細