水泳の世界選手権(7月14日開幕=福岡)に出場する100メートルバタフライの水沼尚輝(26=新潟医療福祉大職員)が9日、練習を公開した。新潟・長岡市のダイエープロビスフェニックスプールで6日から行っている強化合宿で、強度の高いトレーニングに取り組んでいる。昨年10月に腰を痛めてから不振にあえいでいたが、日本記録保持者で前回大会の銀メダリストは目標の「決勝で自己記録」へ、まっしぐらだ。

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迷いは消えていた。世界選手権へ、水沼の顔つきは澄み切っていた。「エネルギッシュな毎日を過ごしている」と晴れやかに言う。長岡市内での合宿は体をいじめる最後の期間。陸上のバイクトレーニングでは心拍数を180に上げながら4分×3回。直径約10センチのパラシュートをつけて水の抵抗を受けながら泳ぐメニューもこなす。腰痛以後はフォーム修正に試行錯誤したが、元に戻した。前回22年の世界選手権(ハンガリー)で日本記録50秒81をマークした準決勝での前半19回、後半20回のストロークで泳ぐ大きなフォームに立ち返った。「いい時の泳ぎを研ぎ澄ます」と、ためらいはない。

19日にはイタリア遠征に出発する。セッテコリ大会(ローマ)で海外勢と戦う。当初の予定になかった海外遠征で世界選手権直前の強行スケジュールだが、あえて挑む。下山好充監督(51)は「水沼は『行かない後悔より、行って後悔したい』と話していた」と言う。2度の世界選手権、東京五輪と国際大会の経験は多いが、海外の空気をたっぷり吸って世界選手権の予行演習にするつもりだった。

前回の世界選手権の100メートルバタフライ銀メダリスト。五輪を含む世界大会で同種目では日本勢初となる表彰台に上がった。今回は「決勝で自己ベストを出すことにこだわる」と日本記録更新を狙っている。昨年まで8年連続で自己記録を塗り替えてきたスイマーは、大舞台で9年連続を目指す。「もう1度、オリンピックという熱い思いも忘れない」と来年のパリ五輪にも視線を向けていた。【涌井幹雄】