飛び込みで夏季五輪日本勢最多の6大会に出場した寺内健(43=ミキハウス)が14日、大阪・八尾市内で引退会見を行った。

昨年末に悪化させた左膝の古傷が引退理由。1日に現役最後の日本選手権を坂井丞とのシンクロ板飛び込みで制し「ここで引退できることをすがすがしく思います」。

ストイックな姿勢は現役最後の日も変わらなかった。飛び込み界のレジェンドと呼ばれて「うれしいですが、レジェンドになれなかった思いはあります。(五輪で)メダルをとって『ありがとうございます』といいたかった」。寺内にとってレジェンドは、五輪金4個の競泳北島康介氏と柔道3連覇の野村忠宏氏。自身の最高順位は5位だった。

思い出の試合には、21年東京五輪の板飛び込みを挙げた。最後のジャンプを終えて小5から二人三脚だった馬淵コーチと抱き合うと、無観客で各国の選手、コーチしかいない会場から拍手が沸き起こった。「少し認められた」。それは世界のダイバーから「伝説」としてリスペクトされた瞬間だった。当面は相棒だった坂井をコーチ役でサポート。日本人が飛び込みに初参加した1920年アントワープ五輪から1世紀。飛び込み界100年の悲願、五輪初メダルは玉井陸斗ら後輩に託す。【益田一弘】

◆寺内健(てらうち・けん)1980年(昭55)8月7日、兵庫・宝塚市生まれ。96年アトランタ大会から五輪6度出場。最高順位は00年シドニー高飛び込みと21年東京シンクロ板飛び込みの5位。01年世界選手権では3メートル板飛び込みで銅メダル。170センチ、69キロ。