6大会連続五輪出場を目指す世界ランキング8位の女子日本代表が、開幕4連勝を飾った。同18位のブルガリアを3-0で下し、4戦連続ストレート勝ち。同じく4連勝のトルコをセット率、ブラジルは勝ち点で上回り、プールB首位をキープした。チームを活気づけたのは石川真佑(23=フィレンツェ)。途中出場でアタック5得点を挙げ、復調をアピールした。前日に同4位のブラジルを苦しめた難敵を撃破し、勢いに乗る日本。次戦は22日に同13位のベルギーと対戦する。
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会場に、力強いスパイク音が響き渡った。「エース」石川が、コートに帰ってきた。第2セット途中から井上に代わりローテーションに入ると、第3セットはスタートから登場。次々と強打を決めて攻撃の軸となった。途中出場ながら、ここまで3試合のアタック得点を上回る5得点を挙げ、チームの4連勝に貢献。「試合を通して少しずつ感覚をつかんできている。残りの3試合にしっかりつなげられる時間だった」と充実の面持ちでうなずいた。
昨季Vリーグで日本人最多記録を更新(735得点)したアタッカーだが、ここまではリリーフサーバーとしての仕事が主だった。それでも「試合に出ているメンバーだけじゃなく、ベンチの選手も一緒に戦うことで勝てる」と、心の準備を怠らなかった。真鍋監督の「野球でいえばリリーフエース的な存在」という期待に応え、「しっかりコートに立つ責任がある。チームの流れを切らさない」と与えられた役割に徹し、結果を出してきた。
その姿からは強気な印象を受けるが「ネガティブな方が多い」と明かす。「うまくいかなかった時にどんどん悪くなってしまう傾向がある」。実際7月まで行われたネーションズリーグではコートに立つ機会が限られ、自信を失いかけた。
そんな時、常にプラス思考の指揮官からかけられた「気持ちは自分自身ですぐに変えられる」という言葉が、己を見つめ直す契機となった。「あまり(過去を)見すぎないようにしました。いいイメージを持つことは大切だけど、逆に悪い時にはいいイメージをしすぎて『できないできない』ってなってしまう」と、考え方をシンプルにした。
18歳の19年に初代表入り。日の丸を背負う経験を重ねながらも、練習への取り組み方は変わらない。「質も大事だけど本数も大事。ただやるだけじゃなくて、目的を持ちながら詰めてきた」。誰よりも早く練習会場へ足を運び、常に狙いを持ってトレーニングに励んできた。だからこそ「不安はない」と言い切れる。日本の勝負強さを支える頼もしい存在が、帰ってきた。【勝部晃多】
◆石川真佑(いしかわ・まゆ)2000年(平12)5月14日、愛知県岡崎市生まれ。小3時に姉と兄で男子代表の主将祐希の影響で競技を始める。長野・裾花中で全国大会2度優勝、下北沢成徳高でも日本一に輝く。19年に東レに入団し同年に代表初選出。21年に東京五輪出場。今季からは兄と同じイタリアのセリエAフィレンツェでプレーする。174センチ、64キロ。
◆パリ五輪への道 パリ五輪出場枠は開催国フランスを含む12。五輪予選のW杯バレーは、世界ランキング上位24カ国が8カ国ずつ3組に分かれ、総当たりで対戦。女子は中国(プールA)、日本(同B)、ポーランド(同C)で開催。男子はブラジル(同A)、日本(同B)、中国(同C)で30日に開幕し、男女いずれも各組上位2カ国の計6カ国ずつが出場権を得る。残る5枠は、男女ともに来年のネーションズリーグ(VNL)予選ラウンド終了時(6月)の世界ランキングで決定。日本がW杯バレーで出場権を逃した場合はVNLに出場し、ポイントを重ねてランキングをより上位に上げることが必要。W杯バレーでの大陸別の切符獲得状況も、重要な要素となる。