「超速ラグビー」への挑戦が始まった。9年ぶりに復帰したエディー・ジョーンズ・ヘッドコーチ(HC、64)率いる日本代表の候補合宿が6日、福岡・JAPAN BASEでスタートした。

第1次エディー・ジャパンの集大成だった15年W杯で主将を務め、南アフリカ戦の歴史的勝利に貢献したリーチ・マイケル(35=東芝ブレイブルーパス東京)らW杯経験メンバーに加え、9人の大学生も参加。現在、国際交流試合を戦う昨季リーグワン4強チーム所属選手を除いた34人が集った。合宿は2日間で、6月初旬の本格始動に向けた準備を進める。

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博多湾にほど近い日本代表強化拠点に、ジョーンズHCの声が響いた。

「15秒レスト(休憩)」

「ノーパニック!」

自らボールを蹴り、実戦形式の練習を進行。息を上げさせたかと思えば、短い休憩で素早い意思疎通を促す。速い判断と質の高いプレーを徹底し、防御が手薄になる狭いサイドを攻める意識をつけた。

求めるのは超速ラグビー。初日から体に覚え込ませた。

「寝る」「立つ」「走る」。素早い切り替えで要求を体現したのが、リーチだった。

9年前を思い返し、指揮官の変化を感じ取っていた。

「面白かったのはバーッとやり疲れたままじゃなく止める。回復して話し、もう1回スピードを意識する。(9年前は走り続けて)ヘトヘトでカオスな状態。(今回は)質にこだわっていたんじゃないですかね」

自身にも変化を求められた。従来はフランカー、NO8のFW第3列が主戦場。だが、この日会うなり「4番(ロック)を頑張ってください」と付け加えられた。ロックは13年前に卒業した東海大以来。さらなる成長を求められた35歳は「スクラムを組めるようになれば1つの武器になる。長く生きるために、いろいろなポジションができたらいい」と奮い立った。

唐突なジョーンズHCの要求は、もちろん織り込み済み。練習でも「何がくるか分からないから準備しました」と、開始からマウスピースとヘッドギアを装着。メニューにないスクラムに備えて踏ん張れるスパイクも用意。最年長選手のそんな“油断”ない姿は、自然と緊張感を波及させた。

リーチは同時に、9年前と変わらない指揮官の情熱も感じていた。

「話をしていても、勝ちたい意欲がすごい。日本ラグビーを変えていきたい思いが強い」

この日の朝、全体ミーティングで問われた。

「(現在の世界ランク)12位から1位になるために、必要なものは何か」

小グループを作るように促され、姫野とともに、初招集の19歳石橋、25歳バカヤリアの意見をくみ上げた。3年後のW杯は39歳。後輩を導きながら、自ら先頭で汗をかく。

「エディーさんは目指しているところは高い。プレーヤーとして一緒に頑張りたい」

日本代表初の100キャップまで、残り16。ジョーンズHCとともに、超速ラグビーを追う。【松本航】

 

○…初招集組も刺激的な初日を過ごした。早大の新主将に就任した3年生フッカー佐藤は、積極的にジョーンズHCと話し「うれしいけれど、観客じゃない。選ばれにここに来ている」とアピール。前日5日に追加招集された京産大1年のSH高木は、周囲を見渡し「テレビの(中の)存在」と初々しかった。中学時代に所属した、かしいヤングラガーズ(福岡)をジョーンズHCが訪れたことがあったといい「びっくりしかない」と突然の縁に驚いた。

▼ロック石橋チューカ(19歳で選出され)「自分よりデカい人には勝てない。どうしたら勝てるのかを考えると、低さと速さで勝っていくしかない。そこをもっとレベルアップしていきたい」

 

○…昨秋のW杯フランス大会で主将を務めた姫野は、大学生から刺激を受けた。最年少は京産大ロックの石橋とSH高木、早大WTB矢崎の大学1年生トリオ。19歳の3人に目をやると「『俺、オッサンじゃん』と思った。リーチに言ったら『オッサンと思ったら負けだ!』と言われました」と笑わせた。全体練習後には帝京大3年の青木に、タックルやジャッカルのコツを伝授。「超速ラグビー」の実現へ「理解や判断、スキルは経験も関係する。自分が力になると思うし、周りも助けられると思う」と意気込んだ。

▼ロックのファカタバ(23年W杯代表)「トレーニングもミーティングも新しかった。(ジョーンズHCのイメージは)ちょっと怖さもある。できるだけ長く、代表に貢献していきたい」