<2009年4月9日付日刊スポーツ紙面から><柔道:全日本選抜体重別選手権>◇5日◇福岡国際センター◇女子48キロ級ほか

 女子48キロ級で福見友子(23=了徳寺学園職)が2年ぶり2度目の優勝を果たし、悲願の世界選手権(8月、ロッテルダム)の初切符を勝ち取った。決勝で「ポスト谷」のライバル山岸絵美(22=三井住友海上)との直接対決で劣勢をはね返して優勢勝ちした。2年前に女王・谷亮子を下して初優勝したが、世界選手権代表から落選していた。同階級で谷以外の選手が選出されるのは89年大会以来、20年ぶり。福見が女王継承へ金メダルを目指す。

 畳の上に押し倒された時、ある思いが福見の体を突き動かした。「私はここで終わるのか?」。

 開始1分40秒すぎ、山岸の横四方固めに襲われた。はね返さなければ世界への道は閉ざされる。懸命に体をよじり、そり返って9秒で抑え込みを解いた。「逃げられたからこそチャンスが来た」。勝機は見逃さない。2分24秒、浮き技で有効を奪い突破口を開く。そして残り8秒、いちかばちかで仕掛けてきた相手を隅返しによる有効で試合を決めた。

 2年前、谷を破って初優勝した。高校2年時の02年大会に続く女王撃破。それでも世界選手権は実績重視で谷が選出された。世界選手権には57キロ級佐藤愛子の付き人として同行。そこで谷の7度目の優勝を目の当たりにした。涙がこぼれた。所属する了徳寺学園の山田監督は「精神的に強い子。でも谷が優勝し(北京)五輪出場は難しくなったと感じたと思う」と代弁する。

 だが意識を変えて試練を乗り越えた。自分と谷の意識を比較した時に感じた。「2年前は選抜に勝ちたいだけだった。でも谷さんはいつも世界を見ていた」。日本一は通過点に過ぎないと思い直した。だからこそ練習の質、量に満足することなく上を目指し、実力を伸ばした。

 ともに「ポスト谷」と呼ばれた山岸とは北京五輪後、2勝2敗だった。ライバルに勝ち越し、文句なしで世界選手権に挑戦できる。「福見友子がどういうものなのかを世界で見せたい」。日本の福見を世界に刻み込む。【広重竜太郎】