逆転日本一まで、壊れたって投げる-。日本シリーズでロッテに王手をかけられている落合竜が最強投手陣を総動員して逆襲する。本拠地ナゴヤドームでの第6戦を翌日に控え、5日は同ドームで全体練習。落合博満監督(56)の総動員宣言に呼応するようにホールド王浅尾拓也投手(26)、奇跡のダブルプレーを生んだ高橋聡文投手(27)はイニング無制限のスクランブル登板を志願。投手王国の総力を結集してフラッグをつかみ取る。

 浅尾の表情は決意に満ちていた。午後2時から始まったナゴヤドームでの全体練習でたっぷりと汗を流した。報道陣に囲まれると、きっぱりと言った。

 「明日負けたら終わりなんで、行けと言われれば何回でも行きます。壊れてもいいというぐらいの気持ちで投げたい」

 無制限投球の誓い。それは敵地千葉マリンで唯一勝った第4戦の再現を誓ったものだ。浅尾は8回2死から延長10回1死まで3イニングにまたがって力投した。シーズン中は1度しかなかったロング救援だったが、負ければ終わりの第6戦はさらに早く、長く登板することも辞さない。

 さらに、その試合の延長10回1死満塁というサヨナラ負けの大ピンチを「奇跡のダブルプレー」で切り抜けた左腕高橋も臨戦態勢だ。「疲れはない。そういう時期でもない。持ってる力を全部出したい。ナゴヤドームでは結果も出てるし、勝てそうな気がします」。今季、本拠地で投げた35試合で防御率0・52を誇る快速左腕からは、逆王手、逆転日本一を導く勝利宣言まで飛び出した。

 ロッテに王手をかけられた前夜、落合監督は鬼門・千葉マリンを去る際にこう言い残した。「きょうまではこれでいい。でも、明後日からはそうじゃない」。先発中田賢が初回に4点を失うなど序盤に大量リードを許すと、すぐには救援を送らず、あえて“捨て試合”とした。第4戦でフル回転した浅尾、高橋はブルペンでもほとんど投球練習をせず休養できた。2人だけではない。ベテラン河原も、豪腕ネルソンも、そして守護神・岩瀬もいる。本拠地で最強投手陣を総動員する態勢は整っている。

 落合監督はこの日、グラウンドにこそ姿を見せたが、フリー打撃を見守ったのはわずか10分足らず。すぐにベンチ裏へ引っ込んだ。今季、本拠地での7割5分という驚異的な勝率は、広いドームを味方につけた投手力が源だった。その力で阪神も、巨人も退けてきた。泣いても、笑っても、あと2試合。最後まで、投手力を最大限に押し出す落合野球でぶつかるだけだ。【鈴木忠平】

 [2010年11月6日10時19分

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