意地の保留じゃ!

 広島梵英心内野手(32)が28日、広島市内のマツダスタジアムで契約更改交渉に臨み、800万増の7000万円を保留した。左膝のケガから復活した今季は137試合に出場し、規定打席に到達。右膝のケガの影響で22失策を犯すマイナスもあったが、一昨年の7500万円を希望しているとみられる。球団2年ぶりとなる“銭闘”が勃発した。

 45分間の交渉を終えた梵の表情は硬かった。無数のフラッシュを浴びる中、「押していません」と口を開いた。球団が提示したとみられる7000万円の金額に、自己評価との開きがあった。

 「今の気持ちで(判を)押すと気持ち悪いなと思った」

 球団では10年オフの木村以来、2年ぶりの保留。梵にとっては09年オフ以来、3年ぶりの保留となった。現在は主力級の選手は下交渉を行った上で、契約交渉に臨む流れが通例で、梵も約1カ月前に下交渉で合意していた。だが、1年間グラウンドに立ち続けたという自負から、「時間がたつに連れ、自分の評価も変わった」と説明した。

 リベンジを期したシーズンだった。昨季は左膝を負傷し、自己ワーストの52試合の出場にとどまり、年俸も1300万円ダウンとなった。「どんな形でも出ると思って臨んだ」という今季は137試合に出場。チーム2人しかいない規定打席に到達し、打率、打点でチームトップ。一方で、シーズン終了後に手術した右膝の影響もあり、リーグワースト2位の22失策を犯しており、球団評価との溝を埋めるのは容易ではない。

 「時間はいくらかかってもいい。世の中では(保留は)悪いイメージなのでやりたくなかった。でも、将来僕と同じような成績を残すかもしれない選手のためにも、夢や希望のある資料を残したい」

 長期戦も覚悟している。厳しい査定が続く野手陣の中では、数少ないアップ組だからこそ簡単には譲れない。希望額は全試合に出場した10年シーズンの7500万円。チームの要は、交渉の場でも最前線で戦い続ける。(金額は推定)【鎌田真一郎】