初代タイガーマスク(59)と「伊達直人」が養護施設への支援活動で共闘を宣言した。7日、リアルジャパン後楽園ホール大会で、狭心症による心臓手術から1年8カ月ぶりにリング復帰。施設へのランドセル寄付で「タイガーマスク運動」の火付け役となった「伊達直人」を名乗る男性が駆けつけ、顔と本名を公表した。自身も支援を続ける初代タイガーは、施設の認知、拡充のため共闘を約束した。

 還暦を1年後に控えた初代タイガーが、リングに帰ってきた。第3試合の6人タッグで、雷神矢口らを相手に、得意のキック、代名詞のローリングソバットで3カウントを奪い、大歓声を浴びた。復帰戦を終えると、リング上で仲間を紹介した。「今日は、本物の伊達直人を紹介します」。10年のクリスマスから、毎年群馬県内の児童養護施設に「伊達直人」の名前でランドセルを贈り続けている前橋市在住の会社員、河村正剛さん(43)だった。

 「伊達直人」は、漫画「タイガーマスク」の主人公の本名。設定では養護施設で育ち、覆面レスラーのタイガーマスクになってからは、人知れず施設の子どもたちにプレゼントを贈っている。同じような現代の「伊達直人」の善意は、全国に広がり、施設にランドセルや文房具などが届けられた。いつしか、その行為は「タイガーマスク運動」と呼ばれるようになった。

 自分の名前が世間に取り上げられ、最初は「あえて前に出ないようにしていた」という初代タイガー。しかし、周囲の勧めもあって11年にタイガーマスク基金を設立した。これをきっかけに2人は出会い、河村さんは基金の理事となって、支援活動が始まった。

 河村さんは、この時期に正体を明かした理由を「私の名前が出ることで、社会的養護の認知度を高めたかった」と説明した。自身も早くに母親を亡くし、小学校時代はランドセルを買えず、教科書などを風呂敷に包んで登校した。狭心症の手術で長期欠場し、復帰を目指している際に相談を受けた初代タイガーは「熱意は本物だと感じた。こういう善意の輪がもっと広がってほしい」と、リングでの実名公表を後押しした。

 リングで、ファンや子どもたちに夢を与えるプロレスを35年間、初代タイガーは続けてきた。同時に新日本プロレス時代から、社会福祉活動に力を入れてきた。毎月開く基金の会合で、河村さんの意見に耳を傾け、今も活動の輪を広げている。【桝田朗】

 ◆タイガーマスク運動 10年のクリスマスの12月25日、前橋市にある群馬県中央児童相談所の正面玄関に、ラッピングした箱入りのランドセル10個が置かれ、職員が発見した。「伊達直人」と署名した封筒が添えられ、「子どもたちのために使ってください」と記したカードが入っていた。ランドセルは計約30万円相当。その後、全国各地の児童養護施設へ、複数存在すると思われる「伊達直人」からの寄付行為が相次いだ。「タイガーマスク」が、11年ユーキャン新語・流行語大賞の候補60語に入った。