ノアは6日、都内の事務所で臨時株主総会、取締役会を開き、前社長三沢光晴さん(享年46)死去に伴う新体制を決め、発表した。新社長に田上明(48)、副社長に小橋建太(42)と丸藤正道(29)が就任した。丸藤の副社長抜てきは、三沢夫人の真由美さんの希望によるもの。生前の三沢さんが丸藤を高く評価していたとみられ、丸藤が実質的な「後継者」に指名された。

 新たな「方舟(はこぶね)」の象徴は、丸藤の大抜てきだった。この日の臨時株主総会、取締役会では、百田光雄副社長、永源遙常務、小川良成取締役、仲田龍統括本部長の4人が辞任し、相談役に退いた。その後、丸藤、そしてやはり抜てき組の選手会長森嶋猛ら新任者をまじえて再び取締役会が開かれ、新体制が決まった。

 社長に就任した田上は、数日前に三沢夫人の真由美さんから電話で、社長就任を依頼されたことを明かした。三沢さんは「株式会社プロレスリング・ノア」の株を半分以上持つ筆頭株主で、その遺族からの要望だった。田上は「選手がバラバラにならないようにということと、丸藤を育ててくれと言われました。この言葉に前三沢社長の遺志が入っていると。常日ごろから奥さんに言っていたことかと思った」と説明した。

 この日、初めて副社長就任を伝えられたという丸藤は「今までは一レスラーとしてやってきた。みんなを引っ張っていかなきゃいけないという責任感を感じた」と話した。全日本入団後に三沢さんの付け人を務め、ノア旗揚げに参戦した。アクロバティックなファイトでファンを魅了し、GHC5タイトルすべてを獲得。だが、三沢さんはレスラーとしてだけでなく、経営者としての資質を丸藤に見いだしていた。将来のリーダーとして、英才教育を施す構想を持っていたとみられる。

 丸藤は29歳、森嶋も30歳。新体制は一気に若返った。「今まで意見が通りづらかった部分がある。若い人の意見と、キャリアのある人たちのノウハウも取り入れ、選手、ファン一体となって盛り上げていきたい」。三沢さんの「後継者」に指名された形の丸藤は、力強く言い切った。【塩谷正人】