<プロボクシング:WBC世界スーパーウエルター級王座決定戦>◇13日(日本時間14日)◇米テキサス州、カウボーイズ・スタジアム

 アジアの英雄マニー・パッキャオ(31=フィリピン)が、史上2人目の6階級制覇を達成した。元WBA世界ウエルター級王者アントニオ・マルガリート(32=メキシコ)に3-0の大差判定勝ちを収め、オスカー・デラホーヤ(米国)以来、史上2人目の快挙を成し遂げた。しかも、初戴冠のフライ級(リミット50・8キロ)から10階級上のスーパーウエルター級(同69・85キロ)を制するという、ボクシング界の常識を覆す偉業だった。ファイトマネーなどの生涯獲得金額は約200億円を突破した。パッキャオの戦績は52勝(38KO)3敗2分け。

 パッキャオの強さだけが目立った36分間だった。身長で11センチ、リーチで13センチも下回り、体格面で圧倒的不利といわれた。5月にフィリピン下院議員選に当選し、練習不足もささやかれた。だが、関係なかった。持ち味のスピードでマルガリートを翻弄(ほんろう)。ガードの間から強打を何度もたたき込んだ。6回こそボディーへの一撃でぐらついたが「ちょっと慌てたけど大丈夫だった」と、立て直した。

 11回途中には、目がほとんどふさがった相手を見て、レフェリーにストップを訴えるしぐさを見せた。「レフェリーに言ったんだ。『(マルガリートの)両目を見たほうがいい』って。彼に一生残るようなケガを負わせたくない。それはボクシングとは別ものだから」。ダウンこそ奪えなかったが、判定でジャッジがそれぞれフルマーク、8ポイント差、10ポイント差の3-0で圧勝。「信じられない。こんな大勝で、こんな強さを見せられるなんて」と言いつつも、余裕を持って6階級制覇を達成した。

 10階級をまたに掛けた6階級制覇は、ボクシング界の常識を打ち破った。04年に偉業を達成したデラホーヤはスーパーフェザー級からミドル級までの6階級で、体重は13・6キロ増。だが、パッキャオはフライ級から10階級も経験し、19キロもの制限体重の変化に対応して世界の頂点をつかんだ。

 世界の137カ国にテレビ配信もされたこの一戦のパッキャオのファイトマネーは1500万ドル(約12億円)。その他の収入を含めると最大2700万ドル(約21億6000万円)を手にし、生涯獲得金額は200億円といわれる。次戦のめどは立っていないが、全階級で最強という意味の「パウンド・フォー・パウンド」と言われる強さに、底はまだまだ見えてこない。