横綱稀勢の里(30=田子ノ浦)が痛い3敗目を喫した。東前頭4枚目の栃煌山に立ち合いでもろ差しを許して、あっけなく寄り切られた。日馬富士、白鵬の両横綱が全勝を守ったため、首位とは3差。37年夏場所の双葉山以来80年ぶりの初優勝からの3連覇は、絶望的となった。

 花道をとぼとぼと引き揚げる背中は寂しげだった。付け人に力なくタオルを放るのは、らしからぬ姿。左腕を曲げて、患部の上腕から胸の辺りを気にするしぐさもあった。深いため息の中で、稀勢の里は2個目の金星を許した。3連覇が大きく遠のく3敗目だった。

 立ち合いが全てだった。前日の碧山と同じく右から張って左差しにいった。だが、この日は差し身のうまい栃煌山。勝手が違った。協会幹部の言葉が厳しい。

 八角理事長(元横綱北勝海) 張り差しが読まれていた。気持ちが張り手の方にばかりいっていた。もったいない。

 審判長を務めた藤島審判部副部長(元大関武双山) 今日は左が甘すぎた。脇が甘いのは悪い癖。もろ差しになってくださいと言わんばかりだった。

 張り手の右を意識するあまり、差し手の左が弱く、差し負けた。もろ差しを許して防戦一方。左から突き落とそうとするも、けがの影響もあってか、弱い。あえなく寄り切られた。

 9日目までの3敗は、16年初場所以来1年半ぶり。2横綱とは3差がついた。3連覇はもはや絶望的。支度部屋で無言を貫いた稀勢の里に、理事長は「(優勝の可能性が)数字上、残っている以上、頑張らないといけない。明日からきっちり勝つのが横綱の務め」と促した。【今村健人】