落語家には多趣味な人が多いが、春風亭昇太(57)は大のお城好きで、クリスマス・イブの24日、パシフィコ横浜で開催された「お城EXPO2016」ではトークイベントに参加した。

 昇太が城にのめり込んだきっかけは、静岡・清水(現静岡市)で中学生だった時、へその緒が入ったきり箱に書かれた「清水市二の丸」という古い住所を見つけたことだった。「『二の丸』って、昔、ここに城があったのか?」に疑問を持ち、調べたところ、自宅近くに江尻城の遺構があることを知り、見に行ったという。以来、全国に3万以上ある城のうち、500~600の城を訪れている。

 「以前はお城ファンと言うと変な人と見られていた。横浜ですばらしいイベントが行われ、こんなに多くの人が集まってくる。今ようやく、大手を振って、城好きと高らかに宣言できる時代が来た」と感激の面持ちだった。

 最初に訪れた江尻城が遺構だったこともあって、姫路城など天守閣のある華麗な城よりも、中世の地味な山城が好きという。「最近になって、中世が広く研究対象になり、中世の城郭の研究が進み、広く知られて、正しく理解されるようになった。それに、各自治体も観光地として遺構を整備するようになった。本当にいい時代になった」。

 来年のNHK大河ドラマ「おんな城主 直虎」では地元静岡の戦国大名だった今川義元を演じる。「昔から今川のファンだったので、気分上々です。織田信長の引き立て役として、バカ大名みたいに扱われていることに腹が立っていたけれど、僕がやって、さらにイメージが悪くなるのが心配です」。

 NHKに城についての企画を提案したところ、採用が決まったという。もともと東海大で日本史を研究し、中退して落語家にならなければ、城研究者の道に進むことも考えていたという。落語会で各地を回ることが多いが、時間があれば、公演先の近くにある城の訪問を欠かさない。城についての著書や雑誌の連載もあり、歴史ものの番組出演も増えている。趣味を超えて、城研究家という肩書も付きそうだ。【林尚之】