田舎町に住む三葉(みつは=声・上白石萌音)と、東京に住む瀧(声・神木隆之介)、高校生男女の入れ替わりの物語、かと思って見た。2人がどう出会うのか、はたまた出会わないのか、恋が実るのか実らないのか…、そのあたりがもどかしくて切ない青春物語なのだろう、と思っていた。

 全然違った! 前半部分は確かに2人の入れ替わりの物語だった。田舎町にはないカフェに行くだけでうれしい三葉(見た目は瀧)がかわいらしく、山々の美しい風景に引き込まれていく瀧(見た目は三葉)がほほ笑ましかった。どうにかこの2人が会えますようにと思った。

 ほんわか気分だっただけに、後半に展開する衝撃に息をのむ。その先は、切ないとかもどかしいとかいうレベルじゃない。ふうっと息をついて、センチメンタル的気分に浸れたはずが、息苦しかった。劇中何度も繰り返される三葉の「瀧くん、覚えて…ない?」という言葉や、オープニングの流星群の場面、いろんな伏線がつながっていった。重要な小道具に組みひもが登場する。思いや時間が絡み合うさまが組みひもに例えられているが、見る側の中でも、言葉や場面が絡み合い、1つになった。【小林千穂】

(このコラムの更新は毎週日曜日です)