雪組トップ早霧(さぎり)せいなが、花形闘牛士を演じて全国を回っている。全国ツアー「哀しみのコルドバ」「ラ・エスメラルダ」は全12カ所を予定し、その中盤に入った。命懸けの闘牛士役に「負けないぐらい強く」と言い、日々その熱さが増す。クールな美貌と熱いハート、ざっくばらんなトーク。特長であるギャップも存分に発揮している。

 劇団でも有数の美形、引き締まった体。立ち姿はそのまま花形闘牛士だ。

 「闘牛士って、尋常じゃない勇気と覚悟がある。命を懸けて、彼(役柄)はそれに値するぐらいの恋をする。私も闘牛士さんに負けない物を作り出さないとウソになると思う」

 役柄へ没頭するタイプ。「そういうことが好き」と笑い、公演を重ねるごとに役への思いは熱くなる。

 今作は1890年代のスペインが舞台。花形闘牛士エリオが、かつての恋人と再会し、恋に揺れる苦悩の姿を描く。85年の初演以来、再演が重ねられる名作で早霧も見ていた。

 「スペイン物の男役の熱さ、格好よさの中に、男女の切なさが入っていて、衝撃的な展開が…。いや、幼い私は、ほんっとに! ビックリしたんです」

 九州出身の早霧の熱さはスペインのイメージに合うが、まだ訪れたことがない。「何度も行こうとして、気がつけば他の場所に」。縁がなかった分、想像を存分にふくらませた。ただ、役柄へ入り込む度合いは、トップになって変わった。

 「のめり込みたくても、やはり自分のことだけを考えられない。舞台のどこにいても、全体を感じていたい。のめり込み過ぎると周りが見えない場合もあるので、今がいいバランスなのかもしれないですね」

 組の充実も感じる。「皆さんに『いい雰囲気』と言っていただけて、私自身も『この方向でいいんだ』と自信がついた」。今年は1月にトップ本拠地お披露目「ルパン三世」でスタート。軽妙かつ二枚目なルパンを好演し、次作「星逢一夜」は和物に臨んだ。

 「私の人生で、年表があるとすれば、バーッと線が、マーカーが引かれる年じゃないですか。ここ! ここ! ここ見て! って(笑い)。1日も無駄じゃない。15年目。今まで支えてくれた皆さんに感謝です」

 1年も終わり。ただ、この季節、怖い物がある。

 「冬が怖くて。嫌い。寒いから。風邪ひく瞬間が分かる。今だ、悪寒が走ったって。ホントです! その瞬間を逃したら終わりだから、すぐ風邪薬を飲む」

 体調管理をしつつ巡る1年半ぶりの全国ツアー。楽しみは“人間”だ。

 「公演地の出身者を見るのが好き。この人、今日燃えているなとか。私は(前回ツアーで地元の長崎公演があり)客観的に自分を見て恥ずかしかった。燃えて、空回り? あははは!」

 声を上げて豪快に笑う。ただ、前回ツアー「ベルサイユのばら」は貴族のオスカル役だったこともあり、あいさつの“おもしろトーク”を封印した。

 「でも、ファンの方は、すごく寂しかったみたいで。やっぱ、そうだよな! って。何を求められて私がここにいるのか。自分の言葉で自分の思いを言うことが最も伝わる。『来てよかった』と思っていただけるように、幕を下ろしたい」

 クールな容姿と熱い内面、凜(りん)としたたたずまいと、気さくな人柄。ギャップも武器に全国を回り、芝居巧者の新任トップが熱い闘牛士役で1年を締めくくる。【村上久美子】

 ◆ミュージカル・ロマン「哀しみのコルドバ」(作=柴田侑宏氏、演出=中村暁氏) 19世紀末のスペインが舞台。花形闘牛士のエリオ(早霧)は、ある夜会で、初恋の女性エバ(咲妃みゆ)と再会。栄光を捨て愛に生きようとし、人生の歯車が狂う。85年、峰さを理主演で初演。95年には安寿ミラ主演、09年に真飛聖主演で再演されている。

 ◆バイレ・ロマンティコ「La Esmeralda(ラ・エスメラルダ)」(作・演出=斎藤吉正氏) 情熱をテーマにしたラテン・ショー。

 ☆早霧(さぎり)せいな 9月18日、長崎県佐世保市生まれ。01年「ベルサイユのばら2001」で初舞台。宙組配属。06年「NEVER SAY GOODBYE」で新人公演初主演。09年に雪組。13年「ベルサイユのばら」でオスカル役。昨年9月に雪組トップ。今年1月、本拠地お披露目となった「ミュージカル ルパン三世」で好演。身長168センチ。愛称「ちぎ」。