15日に肺がんで死去した司会者、俳優の愛川欽也さん(享年80)の密葬が17日、東京・五反田の桐ケ谷斎場で近親者だけで営まれた。37年連れ添った妻でタレント、うつみ宮土理(71)は言葉を発する余裕もないほど、憔悴(しょうすい)しきった表情を見せた。

 この日午前8時過ぎ。都内の愛川さんの自宅から、白い棺(ひつぎ)が霊きゅう車に運ばれた後、愛川さんの遺影を抱えた喪服姿のうつみが姿を見せた。愛川さんが亡くなってわずか2日。霊きゅう車の助手席に座ったうつみは、ほとんど下を向いたまま。車が動き出すと、集まった取材陣に何度か会釈したが、表情は憔悴しきっていた。

 愛川さんは希望通り、安らぐ自宅で大好きな妻にみとられ、息を引き取っていた。故人の遺志で密葬は近親者だけで営まれ、荼毘(だび)に付された。密葬を終えて初めて、所属事務所が愛川さんの死をマスコミ各社に報告した。愛川さんが体調不安を訴えたのは昨年冬。検査で肺がんと診断されたが、病気を公表することなく仕事を続けた。先月末にテレビの取材を受けたうつみの電話に、「はいよー」と元気に応じていたが、がんはすでに脊髄まで転移していた。

 今月に入って突然歩けなくなり、寝たままの状態になった。根っからの仕事人間で肺がんと診断された後も仕事に意欲を見せ、息を引き取る直前まで「仕事に行こう」と寝言のように言っていたという。

 病名を公表しなかったのは、最期まで仕事に復帰する可能性にかけた愛川さんの強い希望だった。今月に入って重病説が流れた際、うつみが「風邪をひいている」とコメントしたのも、夫の思いをくみ取ったものとみられる。

 密葬後、うつみは愛川さんの遺骨を抱え、無言のまま自宅に入った。会見やお別れの会などは未定。所属事務所関係者は「憔悴しきっているので、今日は対応することはできません。今後、時間を見て対応させていただきます。お別れの会などについても、まだ相談できていません」と話すにとどめた。

 この日、愛川さんの自宅には吉永小百合夫妻、中村玉緒、美川憲一らの供花が続々と届けられた。