テレビ朝日は24日、古舘伊知郎氏(61)が「報道ステーション」(月~金曜後9時54分)のメーンキャスターを来年3月31日の放送で降板すると発表した。古舘氏はこの日、東京・六本木の同局で会見を開き、降板理由などについて説明した。12年間の放送を振り返りつつ、将来の報道番組復帰の可能性も示唆した。04年に始まった「報道ステーション」は古舘氏降板後の来年4月以降も番組名を変えず継続することも発表された。

 テレビ朝日の顔を11年9カ月務めてきた古舘氏は、実は2年前に降板を申し出ていた。「10年を区切りとして別の挑戦をしたいとお願いをしたが『契約はあと2年あるから頑張ってよ』と言われ、頑張ってきた」。2年が過ぎ、今年夏に再度、降板を申し出た。慰留されたが、決意は固かった。「辞めたいから辞めるんです。もっと向いている仕事をしたいと思って、娯楽の方にいきたい」と話した。

 就任までの経緯から、これまでを振り返った。「娯楽もので生きていたいと思っていてずっと(キャスター就任を)固辞していた。でも(現テレビ朝日会長の)早河(洋)さんがうまくて、コロッとだまされちゃった。『古舘さんの自由に、あなたの絵を描いてよ、報道番組に』みたいなことを言われて、やるって言っちゃったんです。そう言ったわりにはものすごく不自由な10年間だった」。

 「報ステ」以前は、エンターテインメントでしゃべりを武器にしてきたが、報道番組では時間的、物量的に放送コードの制約で、思う存分しゃべることができなかった。「テレビの世界でやらせていただく限り、不自由さが取れるわけじゃないけど、ちょっと緩くなる。唯一やりたいことは、しゃべり倒したい。12年間の鬱憤(うっぷん)がたまっている」と話した。

 同局では、後任について検討中としたが、番組名は変えず来年4月以降も継続するとしている。後任キャスターについて関係者は「古舘色がある番組の名前を変えないということは、外部から招くことはしないのでは」と話す。古舘氏は「堅いジャーナリストの方にやっていただくという線もあるでしょうし、僕と同じアナウンサー系もあるでしょう。名前が残る以上はきちっとやってくれる、あまり問題発言しない方がいい」と自虐を交えて語った。

 報道番組に革命を起こしたと言われた久米宏氏(71)がキャスターを務めた「ニュースステーション」の後継番組としてスタートした「報ステ」。放送開始直後に「いつか違った地平に屹立(きつりつ)したい」と語ったこともあった。この日は「何とか爪をひっかけたいという気概は持っていましたが、新たなニュース番組の地平に屹立したかというと、その半ばで辞めていくのかなという思いです」と語った。

 終始さばさばと語ったが、報道番組への復帰について聞かれると「あり得ると思います。今はありませんけど、虫がうずくかもしれない」と答えた。【小林千穂】

 ◆古舘伊知郎(ふるたち・いちろう)1954年(昭29)12月7日、東京都生まれ。立大卒業後の77年にテレビ朝日入社。同8月からプロレス中継を担当。84年からフリー転身。85年フジテレビ系「夜のヒットスタジオ」の司会も務めた。単独トークライブ「トーキングブルース」は88年から16年間続ける。94年から3年間NHK紅白歌合戦司会。04年から「報道ステーション」メーンキャスターに専念。昨年に11年間休止していた「トーキング-」を復活。血液型AB。