バラエティー番組でも活躍する俳優柳沢慎吾(53)が、芸能生活38年目にして映画初主演を射止めた。今月27日から公開される「ピン中!」(金沢雄大監督)で、フィリピンパブの怪しい魅力にはまり、仕事も家も捨ててしまう悲しい男を演じている。卓越したお笑いセンスをもち、シリアスな芝居も見せる柳沢のマルチぶりに迫ってみた。

 まさかの映画初主演だ。役者デビューは1979年(昭54)の日本テレビ系情報ワイド「ウイークエンダー」の再現フィルム。その後は、TBS系「3年B組金八先生」で主演の近藤真彦にからむ不良生徒役を演じ、81年のフジテレビ系「翔んだライバル」ではデビュー3年目でドラマ初主演。TBSの名作ドラマ「ふぞろいの林檎たち」シリーズでは中井貴一、時任三郎、手塚理美、石原真理子らと共演した。

 今回の映画初主演に「『誰が?』『慎吾さんがですよ』『俺? 無理でしょ』って言いましたよ」と笑う。ただ、バブル期にはよくフィリピンパブに行っていたという。「打ち上げとかで、よく朝まで飲んでました。この映画は、若い人に見てほしい。フィリピンパブにはまって失踪までした人がいたという時代を知って欲しい。最後にグッと来るような人間模様が描かれているから」。

 バラエティー番組でも活躍する。京本政樹との“兄弟同士”の掛け合い、物まね&実況の「ひとり甲子園」「ひとり警視庁24時」は鉄板ネタだ。とんねるずの「ねるとん紅鯨団」の集団見合いでふられたときに発した「あばよ!」「いい夢、見ろよ!」は、時代を超える名言となった。

 もともと、高1の時には友人とコンビを組んで素人参加番組で大活躍した。関根勤、小堺一機を輩出したTBS系「銀座NOW!」の「素人コメディアン道場」や、竹中直人、とんねるずを輩出した日本テレビ「TVジョッキー」の「ザ・チャレンジ」で優勝。「その後に日本テレビの『お笑いスター誕生』に出る話をいただいたんですが、僕が『役者になりたい』と断りました。その友人は自衛隊に入って、この間無事定年を迎えました」。

 同い年の中井とは三菱UFJ信託銀行のCMで共演中。「硬そうに見えるけど、陽気で明るい。いつも笑いが絶えない」。もう1人の真田広之とは20年以上の付き合いだが初共演となった。「真田さんに元気だね~、って言われたけど、この年になると1年が早い。気持ちは20代後半から変わってないんですけど」と笑う。

 今後については「喜劇映画をやりたい。好き勝手にね。テレビだと、どうしてもストップかかっちゃう。喜劇映画なんだけど、感動がある、メリハリがドーンとあるやつをね」と話した。【構成・小谷野俊哉】

 ◆柳沢慎吾(やなぎさわ・しんご)1962年(昭37)3月6日、神奈川県小田原市生まれ。79年に俳優デビュー。主な出演作品に、80年フジテレビ系「翔んだカップル」、81年映画「セーラー服と機関銃」、85年日本テレビ系「ハーフポテトな俺たち」、95年テレビ朝日「味いちもんめ」。14年フジテレビ系「天誅~闇の仕置き人~」など。167センチ、61キロ。血液型AB。