11月20日付で退団する宝塚歌劇団星組トップスター、北翔海莉(ほくしょう・かいり)が27日、大阪市内のホテルで退団会見を開き、宝塚音楽学校から数えて21年の“タカラヅカ人生”を「もう、お腹いっぱい。大満足です」「本当に何も、後悔はないです」と充実感を漂わせ、笑顔で語った。

 サヨナラ公演は、8月26日に宝塚大劇場で開幕する「グランステージ『桜華に舞え』」「ロマンチック・レビュー『ロマンス!!(Romance)』」。同公演は11月20日に東京宝塚劇場で千秋楽を迎え、同日をもって退団する。

 白のパンツスーツで現れた北翔は、晴れやかな笑顔。涙は一切なく「最後まで、いやこれからもずっと、皆さまのため、世のため、人のための北翔海莉でありたい」と口にした。

 圧倒的な歌唱力、卓越した芝居心、ダンスと3拍子そろった当代筆頭の実力派トップだが、中学卒業後、入学した宝塚音楽学校では「成績は最下位(に近い位置)」だった。

 「何もできなかったから努力が続けられた」

 21年を振り返り「いばらの道でしたが、あの頃(新人時代)の私に、もし会ったら『今のまま頑張っていればいいよ』と言ってあげたい」。信じて歩んできた道は正しかった。

 月組から宙組へ移り、12年7月にはいったん専科へ移った。トップへの夢をあきらめてはいなかったものの「立派な舞台人として皆さまの前に出る。目標が変わっていった」と話し、専科からスター格で全組出演を果たした。

 そして昨年5月、近年では異例の6年超えと長期在位を誇った前星組トップ柚希礼音の後任として、トップ就任の話がきた。“レジェンド”と呼ばれた前任の柚希から、星組トップを引き継ぐ重圧を感じつつも「専科で各組を回っていたので、下級生たちにどう接すればいいのか分かっていたから」とリラックスもできたという。

 同時に、就任時から退団時期も決めていた。近年のトップ在位メドとなる「2年4作(本拠地)」より短い「1年半3作」での退団を「私らしい」と感じ、その決意は揺るがなかった。

 「次の人のためという思いが強かったかな。次代を担う子たちもいて、これからのタカラヅカを背負う下級生たちにももっとたくさんのチャンスを広げてあげたかったから」

 星組には2番手スター紅ゆずるをはじめ、新人公演を卒業したばかりの8年目ながら抜群の実力を発揮する礼真琴ら、多くの有望なスターがおり、北翔も満足感を感じながら、次世代へバトンを渡したいという。

 また、自身は、退団後は歌唱力、演技力などを生かして女優活動を継続することになりそうだが、現在は「目の前のことに追われていて、何も…。ただ、退団して少し落ち着いたら、ファンの皆様に謝恩会のようなものを開きたい」とも語った。

 一方で、トップ退団時の恒例質問「結婚の予定」については、30分近い会見の最後に飛び出し、北翔は「恒例の質問、こないのかな? と思っていたから、うれしい」と笑わせ「それは運命の女神さまに任せたいです」と、主演公演のセリフをアレンジして答えていた。