12日に亡くなった演出家蜷川幸雄さん(享年80)の葬儀、告別式が16日、東京・青山葬儀所で営なまれた。平幹二朗(82)大竹しのぶ(58)吉田鋼太郎(57)小栗旬(33)藤原竜也(34)が弔辞を読み、蜷川さんとの別れを惜しんだ。

 蜷川さんに見いだされ、97年の「身毒丸」でデビューした藤原は「1997年、あなたは僕を生みました。19年間、苦しくも…、ほぼ憎しみでしかないですけど、本当に最高の演劇人生をありがとうございました」と大泣きした。

   ――弔辞抜粋――

 平 あなたと四つに組んだ17本の芝居は僕の宝です。充実した演劇人生を送ることができました。でもあなたは、1度も演技を褒めてくれませんでしたね。なんとか褒め言葉を引き出したくて、熱演に熱演を重ねました。肺を痛めてしまうまで。今、シャーロック・ホームズに死なれたワトソンのように、途方に暮れています。ドラマのように生き返ってほしい。さよならは言いません。

 大竹 「マクベス」で海外公演を初めてさせてもらった時、「ねえ、俺がさあ、海外に出る理由分かる? いつも勝負していたいんだ。自分を追い込まないとだめになっちゃうだろ」と。あなたの魂の叫びは、世界中の観客の中に、私たちの中に残っています。「どうだ?」といつふらっと稽古場に現れてもいいように、私たちは演劇を続けていかなければならないのです。

 吉田 そちらにいってしまわれる前に、「尺には尺を」の稽古を見学させていただき、(藤原)竜也とお見舞いに行きました。その時の竜也の顔が忘れられません。まるで、母犬とはぐれた子犬のような表情でした。蜷川さんに「『テンペスト』やろうって言ったじゃないですか」と言うと、少しだけ目を開けてくださいました。ずっと戦い続けて、まだベッドの上で戦い続けていました。もう少ししたら会いに行きます。シェークスピアくんもまぜてやって、一緒に芝居作りましょう。

 小栗 どうします、予定していた僕との公演? 嫌われて、僕も勝手に嫌って、仲直りしてもらって、やっと一緒にできると思っていたのに、悔しいです。先日、蜷川さんの思い出話に花を咲かせました。僕たちは蜷川さんを中心とした大きな劇団の一員だよね、という話になりました。会いに行くのは先ですが、新しい「ハムレット」の演出を考えておいてください。時々でいいので、夢の中にしかりに来てください。

 藤原 蜷川さん悔しいでしょう? 僕も同じです。もっと一緒にいたかったし、一緒に仕事がしたかった。直接の声は、心の中でしか聞けませんが、思いを、ここにいるみんなで受け継いで、頑張っていきたいと思います。気を抜いたら、バカな仕事をしてたら、怒ってください。