3年ぶりとなる新アルバム「ニューヨーク9番街57丁目」を発表した英ロック歌手スティング(65)が日刊スポーツのインタビューに応じた。新譜を発表する時に常にこだわっているのは、聴く人を驚かせることだという。音楽にかける思いや、意外な悩みも告白した。

 細身もあるが、その風貌は65歳には見えない。声も若々しい。秘訣(ひけつ)を聞くと「イッツ・マイ・ジョブ!(仕事だよ)」と笑顔で返した。

 「ヨガと水泳は毎日やっている。それより何より、歌うこと自体がトレーニングになっているね」

 新アルバムは、人気ロックバンド「ポリス」時代の名盤「シンクロニシティー」を思わせるロックサウンドが印象的な仕上がり。しかしそれは意図的ではないという。

 「プレーヤー、ソングライター、アレンジャーと今の自分の全てが凝縮された作品だが、自分の中には当然ポリスのDNAがある。意図したことがあるとすれば、それはみんなを驚かせること。多くの人から『こんなアルバム久しぶり』と驚かれるだけで、実は自分としては満足なんだ」

 20年前、イタリア・トスカーナ地方にブドウ畑を購入し、15年前からワイン作りに励んでいる。所有するワイナリーでは4種類を生産している。87年発表のアルバム「ナッシング・ライク・ザ・サン」の収録曲「シスター・ムーン」の名を冠したワインは世界的にも評価が高い。

 「自分にとってワイン作りは音楽作りとよく似ている。他にはない唯一のワインを作りたいという思いは自分の声と一緒で、他にない唯一のものだからね」

 意外にも、私生活で音楽を聴いてリラックスすることがないという。

 「音楽は大好きでいろんなジャンルに興味があるけど、ついつい『このフレーズいいな』『この言い回し使える』と曲作りのアイデアに結びつけてしまう。その意味ではミュージシャンはみんな泥棒だと思うよ。誰の影響を受けたか? それは言えないな。僕もたくさん盗まれているから、いいでしょう(笑い)」

 注目している歌手を聞くと「エリオット・サムナーさ!」と即答した。

 「知らないの? 実は私の娘なんだよ。アルバムも出していて素晴らしいんだ。私のDNAを50%は感じるが、残りの50%はよく分からないけどね」

 ちゃめっ気たっぷりに娘を紹介して笑った顔は、どこにでもいる父親のようにも見えた。 【川田和博】

 ◆スティング 本名ゴードン・マシュー・トーマス・サムナー。1951年10月2日、英ニューカッスル生まれ、77年に3人組ロックバンド「ザ・ポリス」を結成、78年にデビュー。84年に活動休止、翌85年からソロ活動を本格的に開始。ソロ歌手としてグラミー賞を合計10回受賞、ゴールデン・グローブ賞やエミー賞も受賞、アカデミー賞にもノミネートされた。03年「ロックの殿堂」入り。子供は、76年に結婚した夫人との間に2人、女優で現在の妻トゥルーディ・スタイラーとの間に4人。