<巨人5-0阪神>◇12日◇東京ドーム

 巨人長野久義外野手(29)が、先制打を含む2安打1打点と攻撃の起点となった。5月14日ヤクルト戦以来となる3番で出場。初回1死三塁、阪神先発の能見から中堅右へ適時二塁打を放った。「いいリズムで打席が回ってきたので何とか犠牲フライを打ってその流れを切らさないようにと思っていた」。1番坂本との「サカチョー」コンビで勢いを作った。

 持ち前の積極性だけではなく、この日はボールの見極めも光った。3、8回は四球で出塁。塁上でも、揺さぶりをやめず、小刻みにリードを重ね、好投手へプレッシャーをかけ続けた。原監督は「あれだけボールをよく見られて足もパンチ力もある。相手にとっては嫌ですね」と褒めた。

 特別な相手から打った。「能見さんとの対戦を、非常に楽しみにしていました」と振り返った。昨年のWBCでチームメートとなり、寡黙に取り組む姿に尊敬を覚えた。昨季、阪神はCS第1Sで広島に敗戦した。能見は温存され登板機会がなかった。翌日、東京ドームの通路で言った。

 長野

 悔しかったと思う。能見さんの分まで戦うつもりで、今日から曲を使わせてもらいます。

 能見が、昨年入場曲に使用したエレファントカシマシの「俺たちの明日」をポストシーズンで限定使用した。

 先輩から学んだ姿を示すように淡々と仕事を重ねた。「本当に打てて良かったです」と長野。能見への“恩返し”を果たし、阪神の白星街道を止めた。【栗田尚樹】