元日本代表監督の岡田武史氏(59)がオーナーを務めるFC今治(愛媛)が四国リーグを制しました。

 首位で迎えた最終節。勝てば優勝、引き分け以下で逆転V逸の大一番でリャーマス高知FCに2-0で勝ち「オーナー岡ちゃん初V」を達成しました。前年は3位だっただけに一安心、といったところでしょうか。

 ただ、岡田氏が「ようやくスタートラインに立てた」と話したように、今季目標のJFL(J1、J2、J3に次ぐ日本の4部)はまだまだ先の話です。昇格するには、各地区の王者が集まる全国地域リーグ決勝大会を勝ち抜かなければなりません。1次ラウンド(R=11月6~8日)と決勝R(同21~23日)の2段階。1次Rには全国の地域リーグを制した9チームと、全国社会人選手権から最大3チーム(重複があった場合、今年は東海、北海道、中国の順に2位チーム)が出場する大会です。

 1次Rは12チームを3組に分け、総当たりのリーグ戦を実施。各組1位と2位の成績最上位チームが決勝Rに進み、さらに上位2チームがJFLに昇格できるシステムです。1次R、決勝Rともに3日間で3試合。中2日や中3日で「連戦」と表現されるサッカー界で中0日…。野球のような3連戦で「日本で最も過酷な戦い」と称されます。現在J1の松本なども、この大会の“卒業生”です。

 当然、勢いだけでは突破できません。FC今治は、岡田氏が経営参画する前の12年、天皇杯で広島を2-1で破るジャイアントキリング(大物食い、番狂わせ)を起こしました。広島は前年のJ1王者です。そこにカテゴリーで言えば5部相当のFC今治が勝ったのですが、その年ですら、地域リーグ決勝大会で敗退しているのです(現在J3の相模原と福島が昇格)。

 岡田氏は「まずは1次R第1戦に向けて、準備に集中したい」と切り替えました。今年の1次Rは大分県中津市、島根県出雲市、愛媛県松山市で分散開催されます。同氏は「うちは、おそらく松山会場になりそう」と見通しを語った上で「お金もないんで(同じ県内で遠征費が浮く)アドバンテージはありますね」。さらに、決勝Rは同じ四国の高知県高知市。昇格を来年以降に持ち越せば、より厳しいアウェー戦となる可能性が高まります。追い風が吹く今年、何とか切符をつかもうと陣営は必死です。

 岡田氏は「日に日にFC今治が認知されてきて、だいぶ手応えを感じている。ただ、足踏みしていると盛り上がりが逃げていく。しぼんでしまう」と懸念し、必ず今季の昇格を果たす構え。7月に加入した元日本代表MF山田卓也(41)も「本当に厳しい大会になる。昼間の連戦には驚かされるけど、結果を残して地元の期待に応えたい」と話し、チーム一丸で連戦に耐える体をつくっています。

 その予行演習と位置付けるのが、全国社会人選手権(10月16~21日)。仮に四国リーグで優勝できなければ、この大会で地域リーグ決勝大会の出場権を得る必要があったが、テストに専念できる。決勝まで進めば5日間で5試合という超連戦。ここで状態を見極め、勝負の1次Rへ。大目標の「10年後のJ1で優勝争い」に向けて、FC今治が第1歩を踏み出す。

 ◆全国地域リーグ決勝大会の出場チーム 全国9地域の王者=札幌蹴球団(北海道)FCガンジュ岩手(東北)ブリオベッカ浦安(関東)サウルコス福井(北信越)FC刈谷(東海)アルテリーヴォ和歌山(関西)松江シティFC(中国)FC今治(四国)新日鉄住金大分(九州)が決定。ここに全国社会人選手権の3枠が加わる。1次R(4チーム×3組)の組み合わせは10月24日に決まる予定。

 ◆木下淳(きのした・じゅん)1980年(昭55)9月7日、長野県飯田市生まれ。早大4年時にアメフットの甲子園ボウルに出場。04年入社。文化社会部、東北総局、整理部を経て13年11月からスポーツ部。地域リーグ取材は総局時代の東北社会人1部以来で、当時所属した盛岡と福島が現在J3で奮闘中。