元日本代表の磐田MF名波浩(35)が今季限りで現役引退する意思を固めたことが12日、明らかになった。左足の多彩なキックを武器に90年代後半から日本代表の中心選手として活躍したが、近年は右ひざのけがに苦しんでいた。先週クラブ側と話し合い、引退を決断。去就問題を長引かせては周囲に迷惑がかかると考え、リーグ戦を3試合残した時点で公表することにした。14日に記者会見する。

 プロ入り時にはJリーグ10チームの間で争奪戦が繰り広げられた。95年に磐田入りし、新人ながら開幕戦でデビュー。3度のリーグ優勝などチームの黄金期を支えた。95年8月コスタリカ戦で日本代表としてデビューし、いきなりゴールを挙げるなど、「天才レフティー」の名をほしいままにした。日本が初出場を果たした98年W杯フランス大会では背番号「10」をつけ、中田英寿氏らとともに1次リーグ3試合に先発出場して日本を引っ張った。優勝した00年アジア杯では大会最優秀選手に輝くなど、国際Aマッチ通算67試合出場で9得点の記録を残した。

 99年には日本人選手3人目となるセリエAへの移籍を果たし、ベネチアでプレー。00年途中に磐田に復帰し、その後、C大阪、東京Vでプレーを続けた。東京V時代の07年のシーズン前には「90%ラストイヤー」と話し、引退を覚悟したこともあったが、昨年12月、「このまま終わっていいのか」という周囲の声で現役に踏みとどまり、古巣の磐田に復帰していた。J1通算は313試合に出場、34得点。記憶に残る天才レフティーが静かにピッチを去る。