J1山形MF財前宣之(33)が1日、戦力外通告を受けた。J2仙台から06年に移籍し、主力としてチームをけん引。今季のJ1昇格にも貢献した。だが今季は若手の台頭もあり、ここまでリーグ戦出場は11試合止まり。初の「J1みちのくダービー」を、誰よりも楽しみにしていたが、かなわぬ夢となった。今後については未定。また、財前を含む7人がこの日、戦力外通告を受けた。

 覚悟はしていた。だが、戦力外通告がいざ現実のものとなると、財前もショックを隠しきれなかった。いつもは気さくに取材に応じる男が、この日は足早に車に乗り込む。表情こそ穏やかだが「ごめん。今は何も話せない」と発すると、クラブハウスを後にした。

 95年にV川崎(現東京V)でプロ生活をスタートし、イタリアの名門ラツィオに留学するなどトップ選手への道を上りかけた財前。だが度重なるひざの故障に泣き、99年に拾われる形で仙台に入団した。「ありがたかった。もともと母親が青森出身で、小さいころ浅虫温泉でよく遊んでた。だから東北に行くことになっても、違和感は全然なかった」と、かねて東北への愛着を口にしていた。

 若手の成長を「チームが底上げされるからいいこと」と話していた財前だが、出場機会ばかりか、在籍さえも奪われてしまった。中井川GMは「功労者ではあるけど、今シーズン戦って、チームとしてレベルアップしないと(J1)2年目は難しい。苦渋の決断です」と、説明した。

 チーム事情で慣れないFW起用にも応え、時折見せるキラーパスで、観客を沸かせた財前。寒い時期には「両ひざがギスギスする」と話し自らベンチ外を申し出るほど、パフォーマンスが低下していたのも事実。そんな状態でも、残留決定まで「仙台が上がったし、うちも(J1に)残らないといけない」と気持ちは折れなかった。J1みちのくダービーを実現させ、東北を熱くさせる-。そのピッチに、財前はいない。【山崎安昭】