柏のFW北嶋秀朗(33)が、病気と闘うサポーターのためにもゴールを量産する。ゴール裏で応援していた藤田圭吾さん(20)が細菌性髄膜炎で意識不明の状態であることを知った北嶋は、病院に見舞いに訪れ、選手全員のサイン入りユニホームをプレゼントするなど1日でも早い回復を願っている。今もなお意識は戻っていないが、現在首位を走る柏の様子はテレビを通し伝えられている。北嶋は「僕らの活躍が少しでも良い薬になれればうれしい。時間をつくってまた会いにいきたい」。まずは28日神戸戦(柏)勝利を病室に届ける。

 今季4得点、好調柏を支える北嶋の存在が、意識不明の「仲間」を勇気づけている。病魔と闘うサポーターの思いを胸に「一緒に戦ってくれた仲間だと選手みんなが思っています。常に頭にあるし、心にある。僕らにも圭吾くんが力をくれているし、活躍する姿が良い薬になってくれると信じている」と決意した。

 北嶋はサポーターのホームページ上で病気の事実を知った。東日本大震災の練習中断期間中には病院を見舞った。「そこが君の戦う場所じゃないぞ」と激励。それまでほとんど反応はなかったが、わずかに目を動かす反応を示してくれた。選手会長のDF村上らとも相談し、全員のサイン入りユニホームをプレゼント。病室に飾られている。

 看病を続ける母は「勝手ながら圭吾のために得点をとって、勝ってくれていると思っています」と話す。北嶋や柏の活躍を報じた新聞や雑誌のスクラップ、柏サポーターから定期的に送られている試合のDVDを流し「レイソルは首位だよ。早くこっちに戻っておいで」と呼び掛けている。「そんな時は、わずかですけど目や手が動くんです。いつの日か必ず、日立台での応援に行かせるつもりでいます」。

 23日には33歳の誕生日を迎えた北嶋。この日の練習後に同僚や家族に祝福された恩返しに、日立台での3並び3得点を誓った。「僕もケガの時期に支えてくれた人には感謝している。自分がゴールして試合に勝って、サポーターそして圭吾くんに喜んでもらいたい。機会を得てまた会いに行きたい」。ストライカーが思いを背負って走り続ける。【鎌田直秀】