<J1:横浜1-1甲府>◇第8節◇27日◇日産ス

 横浜MF中村俊輔(34)は、軸足が浮き上がるほど思いっきり左足を振り抜いた。前半4分、ゴールやや左、約30メートルからの位置で直接FKのチャンスを得た。繊細な感覚でコースを狙う中村にとって、やや遠い距離。普段より2ステップほど多く助走を取り、ボールに強い衝撃を与えた。ボールはゴール右隅へ、ぶれながら沈み、GKのセーブを許さずネットに収まった。

 中村

 早い時間帯で距離も遠かったので、外してもいいと思って強く蹴った。いつものオレのキックではなかったけれど、これが入ったことで、次の相手はオレがどんなボールを蹴るか迷うはず。

 この日のゴールは、実は「見せ球」だった。開始早々のFKで強いキックを見せておいて、得点につながる可能性が高い位置では、本来の柔らかいキックで決める作戦だった。「見せ球」をより脅威にするため、今季は試合前日に必ずFK練習時に強いキックを繰り返している。その積み重ねが、得点につながった。

 「キッカーとしての責任だと思っている」。直接FKからのゴールは、G大阪MF遠藤に並ぶJ1最多の16点目。記録としてカウントされないが、過去には直接FK時にボール横に味方を立たせ、1度預けて壁を外してから決める“トリックゴール”も多かった。実際のFKによる得点は、遠藤をはるかに上回る。

 中村はFKを成功させるため、正確なキック以外にも技を持っている。1度蹴るふりをして寸止めし、蹴り直すことがある。壁に入った相手個々のジャンプした時の高さをチェックするためで、そこで最も低かった相手の頭を狙うという。

 W杯南アフリカ大会を最後に代表引退を宣言したが、FKの技術と選択肢は、年齢とともに進化し続けている。【盧載鎭】

 ▼直接FKゴール

 横浜MF中村が、J1リーグ戦で今季3点目、通算16点目の直接FKゴールを決めた。遠藤保仁(G大阪)の16点に並び歴代最多得点記録となった。今季3点の距離(推定)は30、28、30メートルの平均29・3メートルとロングFK弾が目立つ。昨年までの13点は最長27メートルで平均21・0メートル。今季の射程は約8メートルも延びている。

 ◆J1通算直接FK得点5傑(1)遠藤保仁(G大阪)16(1)中村俊輔(横浜)16(3)三浦淳宏(横浜FC)15(4)マルシオ・リシャルデス(浦和)14(5)アルシンド(東京V)13(5)ウェズレイ(大分)13(5)小笠原満男(鹿島)13【注】順位、選手名、チーム名、得点の順。チーム名は現在およびJ最終。