<J1:鳥栖0-2広島>◇第27節◇28日◇ベアスタ

 広島がエースFW佐藤寿人(31)の芸術的な先制ゴールなどで鳥栖を下し、首位横浜に勝ち点2差に迫った。佐藤は前半23分、左足でゴール右隅に今季17点目を決め、得点ランク2位に浮上した。小学生の時、94年米国W杯アジア1次予選のタイ戦でカズ(三浦知良)が決めたシュートに憧れ、練習を重ねてきた一撃。逆転でのJ連覇に勢いをつけた。

 一瞬の静寂の後、じぇじぇじぇの歓声が湧き上がった。前半23分、広島FW佐藤の先制ゴールだ。左サイドに流れつつ、ロングパスに走り込んだ佐藤は、展開すると思わせて、予測外のシュートを放った。左足で放った鮮やかな軌道はゴール右隅に突き刺さる。「狙い通りだけど、最初はポールに当たるかと思った。ああいうゴールは決まるか決まらないか、紙一重なんで」。ミラクルだった。

 この試合、初めて放ったシュートだった。「ボールに触りたかったけど、我慢しながらどれだけできるか」。ペトロビッチ前監督に「FWは我慢しろ」とたたき込まれた。「若い時ならできなかった。FWをやっている以上、(相手が)どこで受けられたらイヤか、普段の練習から狙っている」。導いた答えの1つがこの得点だった。

 スーパーゴールの原点はカズにある。94年米国W杯のアジア予選。「小学生でした」という佐藤に強烈に刻まれた1発があった。タイ戦で同じような展開からカズ(三浦知良)が、左足で芸術的なゴールを決めた。「たくさんゴールを見てきたが、ものすごく印象に残った。かっこよかったから。すごいきれいだったから」。その光景に憧れ「そればかり練習してきた」と同じ場面を想定し練習を重ねてきた。

 GKの頭を越すように弧を描いたシュート。練習からゴールポストとの間にコーン標識を置き、足の入れ方、回転のかけ方もいろいろ変えて、試してきた。「(高萩)洋次郎に『よく狙ってますね』って言われました」。子どものころに感動した「カズの弾道」が佐藤の武器を生み出した。

 今季17得点でランク2位に上がり、引き分けた横浜に勝ち点2差に迫った。「苦しかった8月から少し上向いたかな。自力Vが復活したということは、自分たちの手の中にある」。広島のエースは、J連覇を射程に捉えた。【実藤健一】

 ◆カズの得点VTR

 93年4月8日のW杯アジア1次予選第1戦、日本-タイ戦の前半29分、福田正博(当時浦和)の縦パスを、三浦知良(当時V川崎)がDFラインの裏に抜けだし、左足のボレーで先制。「カズ・ダンス」で4万人の観衆が歓喜した。