<J1:広島1-0仙台>◇第30節◇26日◇Eスタ

 広島の元日本代表FW佐藤寿人(31)が悲痛な叫びを上げた。日本代表アルベルト・ザッケローニ監督(60)が見守った仙台戦に先発。おとりの動きでMF石原直樹(29)の決勝点を演出し、2連覇を狙う広島は暫定首位に浮上した。日本代表について佐藤は「呼ばれるだけでは代表選考として意味がない」など、常連組以外に出場機会が極端に少ない最近の傾向に胸の内をぶつけた。

 巧みな動きで決勝点を呼び込んだ。後半39分、佐藤がゴール前に流れた。仙台守備陣を引きつけて右の石原をフリーにする。MF青山のパスを受けた相棒の決勝点。暫定ながら再び首位に浮上する勝利を生んだ。

 「危険なエリアに入るのもストライカーの仕事。他の選手がフリーになれば」。試合終了前にザッケローニ監督は会場を去ったが、同43分の交代まで愚直にゴールに迫り続け、今季17得点の存在感を示した。だが、代表選考について笑顔は一切なかった。

 「ストライカーが固まってないという見方(状況)の中で…。ただ(横浜MF)斎藤も呼ばれても出ていないし、自分も去年、ピッチに立てなかった。呼ばれるだけでは代表選考として意味はない。ピッチで見せる場がないと選手としては難しい」

 昨年10月の欧州遠征。佐藤はザックジャパンで追加ながら初招集されたが、2試合で出場なし。「体調も良くて試合を楽しみだったが」と振り返る。昨年は実際、初のJリーグ得点王、最優秀選手賞にも輝いた。

 今月のセルビア、ベラルーシ戦はテレビ観戦。「結果にビックリした。W杯大丈夫かなと不安も感じた」。そして1年前の自分と同じく2試合で出番なしの斎藤がいた。「自分が(代表で活躍したい)とは思うが、ピッチに立てなければ…」と寂しそうに言った。

 佐藤は09年10月25日川崎F戦からこの日まで丸4年間、リーグ戦出場128試合で警告がない。「カズさん、ゴン(中山雅史)さんもそうだった」。清く激しく戦い、昨年はフェアプレー個人賞を獲得。J1通算134点の誇りも持つ。

 一般論として「海外の所属チームで出てない選手が代表を調整の場にすることもどうかなと思う。代表は調整の場じゃない」。日本代表のためにすべてをかける覚悟はある。ただ呼ぶからには1分でもいいから試合に出してほしい-。

 岡田ジャパン時代の10年2月が最後の国際Aマッチ出場だが、通算31試合4得点と実績を重ねてきた。日本屈指のストライカーの叫びは、イタリア人指揮官に届くのだろうか。【益田一弘】