<J1:東京2-1広島>◇第29節◇22日◇味スタ

 東京の日本代表FW武藤嘉紀(22)が新人最多得点記録に王手をかけた!

 ホームでの広島戦で勝ち越し点を決めて、今季12得点目をマーク。チームを3試合ぶりの勝利に導き、上位戦線に踏みとどまらせた。今季5試合を残し、J1記録の13点まであと1点と迫るゲームには、ドイツ人エージェント(代理人)の姿も。海外からも少しずつ注目を浴びてきた。

 武藤のスピードは、ここ一番で生きてくる。1-1のまま迎えた後半29分だった。左サイドの位置からDF太田が放り込んだFKにニアへ飛び込んだ。「点で合わせられれば、自分のスピード、反応の早さで相手よりも先に触れる」。頭をひねりながら流し込んだボールは、DFに当たりながらゴールへ。貪欲に狙い続けた新星は、ツキも味方につけ、貴重な勝ち越し点で雨中のゲームを制した。

 2戦連続無得点で連敗中だったチームを、3戦ぶり勝利に導くゴールは今季12点目。09年に同僚FW渡辺が横浜で記録した新人最多得点記録13ゴールまであと1点。「意識しないと言ったらウソになる」。そう言い聞かせながら、王手をかけた。目標だった2桁得点からシーズン途中に上方修正。5年ぶりの記録とともに、新記録さえも現実味を帯びる。

 活躍すればするほど厳しさを増すマークが成長を促す。この日も、中央からゴール前にドリブルで進入すると、後方から3人がスライディングで襲いかかり交錯。そんな状況に加えて、後半29分にFW河野の投入で3トップから2トップに布陣変更すると考えた。「下がり過ぎるとよくない。前に残る時間を増やした。相手が自分のところにくれば周りが空く。前半はうまくできなかったけど、相手を逆手にとってマークをはがすことができた」と試行錯誤した結果のゴールだった。

 成長を続ける武藤にドイツ人代理人のトーマス・クロート氏(55)が目を光らせた。「タレントのある選手。(海外は)まだ先の話になると思うけど」と否定しつつも含みを持たせる。実は武藤はクラブに提出した目標設定に「2年後に海外移籍」と記した。ただ、ここでは控えめに「毎試合毎試合、少しずつだけど、成長できているんじゃないかな」。残り5試合、この勝利でわずかながらチームも優勝の可能性を残した。武藤が成長した分だけ、東京もしぶとく上位に食らいつく。【栗田成芳】