男子棒高跳びでルノー・ラビレニ(28=フランス)が6メートル03の大会新で優勝。昨年は2月に室内で6メートル16の世界新を跳んだが、屋外で6メートルを超えられなかった。今季は5月のダイヤモンドリーグ・ユージーン大会に続き2度目の6メートル台。ロンドン五輪金メダリストが、8月の北京での世界陸上初タイトル獲得に大きく前進した。

 ラビレニの試技内容は完璧だった。5メートル73から跳び始めると、これを1回目でクリア。5メートル87、93、そして6メートル03とすべてノーミスでクリアした。若手のショーン・バーバー(21=カナダ)が5メートル93のカナダ新記録で食い下がったが、格の違いを見せた。

 ラビレニは好記録の理由に気象条件を挙げた。大会初日に行われる予定だった棒高跳びだが、前日は雨で好記録が望めない状況のため2日目に順延されていた。

「今日は棒高跳びにとって、パーフェクトなコンディションだった。晴れて、寒いということもなく、風もよかった。ロンドンで再び6メートルを跳べたことは意味があった」

 特に風に影響されてしまうのが棒高跳びという種目。ラビレニも6メートルの試合数は室内10回、屋外4回と、風の影響を受けない室内の方が圧倒的に多い。

 記録は室内でしか更新できないような雰囲気もあったが、それを払拭したのが、6メートル02を跳んだ2年前のこの大会だった。

 屋外の世界最高記録はセルゲイ・ブブカ(ウクライナ)の6メートル14が21年間も残っている。その記録を更新する可能性も、この日の跳躍でラビレニが示した。

 女子短距離で好タイムが出た大会でもあった。

 100メートルはダフネ・ジッペルス(23=オランダ)が10秒92で、今季世界3位の10秒80を持つブレッシング・オカグバレ(26=ナイジェリア)を破った。ジッペルスは前回の世界陸上七種競技銅メダリストだが、短距離でもメダル候補に浮上した。

 200メートルはエレイン・トンプソン(22=ジャマイカ)が22秒10の今季世界4位の好タイムで快勝。昨年までの自己記録を1秒以上縮めている成長株で、世界陸上の金メダル争いに加わる勢いだ。

◆今季の男子棒高跳び

 ラビレニが唯一6メートルを超えているが(それも2試合で)、7月前半のダイヤモンドリーグ・パリ大会とローザンヌ大会では2連敗。技術が崩れていたようで2試合とも5メートル70台にとどまった。

 打倒ラビレニの最右翼はロンドン2位のバーバーか。ロンドンで跳んだ5メートル93は今季世界2位で、5メートル90以上は5試合で跳んでいる。不安要素は若さで、シニアの世界大会で優勝争いを経験したことがない。

 2年前のモスクワ世界陸上金メダルのラファエル・ホルツデッペ(25=ドイツ)、パリ大会でラビレニを破って優勝したコンスタディノス・フィリピディス(28=ギリシャ)も今季5メートル90以上を跳んでいる。

 ラビレニが北京世界陸上で6メートルを超えれば金メダルは堅いが、7月前半の2試合のようにすきが生じると、他の選手にも勝機が出てくる。

 日本勢では好調の荻田大樹(27=ミズノ)と、前回6位入賞の山本聖途(23=トヨタ自動車)が世界陸上代表。荻田が海外の試合でも安定して5m60以上を跳ぶまでに成長した。2人そろっての決勝進出も期待できそうだ。