「人類最速の男」ウサイン・ボルト(29=ジャマイカ)が、男子200メートルで大会4連覇を飾った。向かい風0・1メートルの決勝でジャスティン・ガトリン(33=米国)と対戦。同100メートルの雪辱を期すライバルを退けて、今季世界最高の19秒55で、100メートルとの2冠を達成。これで世界大会の連勝と、同選手権での金メダルをともに「10」に伸ばした。次は29日の同400メートルリレーで、短距離3冠を狙う。

 誰も追いつけないことを確認して、笑った。ボルトはゴール20メートル手前で白い歯を見せた。スタートからトップを渡さずに、大会4連覇を達成。ゴール手前から両腕を広げて、2本の親指で自分の胸を指さした。合計4度。「オレの種目」と公言する200メートルでかき集めた金と同じ数。19秒55は、ガトリンの記録を0秒02上回る今季世界最高だ。

 「よくやったぜ、ウサイン! おれが勝つって言っただろ。そのことに疑いなんてないんだ。おれは、自分が世界記録(19秒19)を出したころの姿じゃないことは知っている。でもオレは200メートルに来たら、別の人間に変身するんだ」

 自らの走りでボルト健在を世界中に見せつけた。

 ウイニングランではアクシデントが発生した。近づいてきたテレビカメラマンと接触し、激しく転倒した。左ふくらはぎに擦り傷を負って、出血。逃げ出したカメラマンを警備員が追う騒ぎになった。それでもボルトは「足をケガしてしまったが、問題ない」と表情を引き締めた。

 金メダルをかき集めても屈辱は忘れない。「おれは1度、負けている」。05年ヘルシンキ大会。18歳のボルトは決勝で8位に沈んで優勝はガトリンだった。世界選手権同200メートル決勝では、それ以来の再戦。ライバルを一蹴して、11年越しのリベンジに成功。「オレにとっても国にとっても大きなプレゼント。4個目の200メートル金メダルはデカいぜ。これはグレートな金字塔だぜ」と自画自賛した。

 短距離2冠を達成して、最後は同400メートルリレー(29日)になる。5月の世界リレー大会(バハマ)で、米国に後れを取って2位に終わっている。「すべての種目に全力を出し切りたい」。世界記録を出した09年の速さはないが、まだまだ強い。2大会連続の3冠で、北京の夏を締めくくる。【益田一弘】