10種目で今季世界最高記録が生まれる盛況だった。なかでも女子100メートル障害のケンドラ・ハリソン(23=米国)の12秒24と、女子3000メートル障害のルス・チェベト(19=バーレーン)の8分59秒97は世界歴代2位というハイレベルだった。

 女子100メートル障害のハリソンは、5台目のハードルを越えると2位以下をグングン引き離した。前半競り合っていたのは前米国記録(12秒26)保持者で、13年モスクワ世界陸上金メダリストのブリアンナ・ロリンズ(24=米国)で、後半の強さが特徴の選手。そのロリンズを後半で圧倒したのだから驚かされた。

 ハリソンの自己記録は昨シーズンまでは12秒50で、昨夏の北京世界陸上は予選落ちだった。「どうやってここまで強くなったのか、自分ではわかりませんが、コーチはいつも、12秒1を目指せと言ってくれています」

 世界記録はヨルダンカ・ドンコワ(ブルガリア)が1988年に出した12秒21。旧共産圏諸国が世界記録を連発していた時代の数字を更新する可能性が出てきた。

 女子3000メートル障害のチェベトは1000メートル付近から独走態勢に入ったが、ハードリングはお世辞にも上手いとはいえない。障害の手前でストライドを小さく刻んで踏み切りを合わせ、両脚をそろえて右側に高く跳び上がって障害を越えていく。最後はハイビン・ジェプケモイ(24=ケニア)に0・04秒差まで追い込まれた。チェベトが走力とバネにものをいわせて逃げ切った格好だ。

 チェベトは世界記録に1・16秒と迫るアジア記録、2位のジェプケモイが9分00秒01のアフリカ記録、3位のエマ・コバーン(25=米国)が9分10秒76の北米記録だった。

 男子100メートルは追い風2・6メートルで参考記録となったが、好調のジャスティン・ガトリン(33=米国)が9秒88で優勝。打倒ボルトの最有力候補であることを改めて示した。

 男子1万メートルはモハメド・ファラー(33=英国)が26分53秒71の今季世界最高で優勝。五輪連続2冠(5000メートル&1万メートル)に向けて好調さをアピールした。なお、この種目に出場した大迫傑(25=ナイキ・オレゴンプロジェクト)は途中棄権した。

 ◆今季の女子100メートル障害

 ユージーン大会の結果でケンドラ・ハリソンがリオ五輪金メダル候補筆頭に躍り出た。だが、今年3月の世界室内でも8位で、世界大会での実績は乏しい。ハリソンがシーズンを通じて好調をキープしたり、プレッシャーのかかる大舞台で力を出すことができるかは未知数と言わざるを得ない。

 対照的にユージーンで2位に入ったロリンズや、昨年の北京世界陸上金メダルのダニー・ウィリアムズ(23=ジャマイカ)は、今季はスロースタートの調整をしている。

 同じ米国にも、昨年のダイヤモンドリーグ年間優勝者のドーン・ハーパー・ネルソン(32=米国)や、12秒3台を昨年出しているシェリカ・ネービス(26=米国)、ジャスミン・スタワーズ(24=米国)がいる。全米五輪トライアルは大激戦となりそうだ。