女子100メートル障害でケンドラ・ハリソン(23=アメリカ)が12秒20で優勝し、世界記録を28年ぶりに更新する快挙を達成した。

 ウサイン・ボルト(29=ジャマイカ)は男子200メートルに19秒89で優勝。今月上旬のジャマイカ選手権を欠場していたが、リオ五輪への不安を吹き飛ばした。

 また、男子三段跳びのクリスチャン・テイラー(26=アメリカ)が17メートル78、女子400メートルのショーニー・ミラー(22=バハマ)が49秒55、女子4×100mリレーのイギリスAチームが41秒81の今季世界最高をマークした。

 女子100メートル障害には、2週間前の全米選手権を制したブリアーナ・ロリンズ(24=アメリカ)ら強豪も多数出場していたが、ハリソンが2位のロリンズに0・37秒もの大差をつけた。1台目で早くもリードを奪うと、中盤以降は異次元の強さを見せた。

 フィニッシュ脇のランニングタイマーは12秒5台で止まったが、間もなく12秒20と正式計時が出た。ヨルダンカ・ドンコワ(ブルガリア)が1988年にマークした12秒21の世界記録を実に28年ぶりに更新した瞬間だ。ハリソンは両手で顔を覆った後、両膝をついてトラックに顔をつけて肩を震わせた。立ち上がった後も、涙が頬を伝い続ける。スタンドの観衆も総立ちでハリソンに拍手を送った。

「世界記録保持者! と呼ばれたことは、忘れられないでしょう。勝つことができただけでもよかったので、世界記録と知ったときはものすごく幸せでしたし、祝福されて感動しました」

 ハリソンは興奮冷めやらぬ様子でインタビューに答えていた。

 ハリソンの世界記録には2つの意味があった。

 1つはソ連など旧共産圏諸国がスポーツに力を入れていた1980年代の世界記録を破ったこと。昨年末時点で女子24種目中11種目の世界記録が、当時の記録で占められていた。

 もう1つは全米選手権で6位と敗れたハリソンが実力を証明したこと。5月に12秒24の世界歴代2位をマークし全米選手権も優勝候補の本命に挙げられていたが、ハードルを何台も引っかけて大敗。リオ五輪代表を逃していた。

「オリンピックに行けなくとも、その力を持っていることを、この大会に出場して世界に見せたかったのです。代表になれなくても歩き続け、強くなり続けなければいけない。多くの人たちの祝福は、私にそう言っているようでした」

 来年の世界陸上はロンドン開催。ハリソン対リオ五輪メダリストたちの対決が焦点の1つになるだろう。