【6月後半の陸上競技展望・海外編】

 日本選手権(6月8~10日)でロンドン五輪日本代表が決定したが、6月後半は米国とジャマイカの五輪代表選考会に注目が集まる。

 これまで海外の選考会で最も注目されたのは米国だったが、今年は間違いなくジャマイカだ。100メートルと200メートルの世界記録保持者で、両種目の北京五輪金メダリストのウサイン・ボルト(25=ジャマイカ)が出場する。

 今季はすでに100メートルで9秒76で走っている。世界記録(9秒58)までは難しいが、9秒69の自己2番目の記録を上回る可能性はある。200メートルは今季初レース。19秒91の今季世界最高は上回るだろう。

 記録よりも、ボルトとヨハン・ブレイク(22=ジャマイカ)との対決の方が注目度は高い。ブレイクは昨年の大邱世界陸上100メートル金メダリスト。ボルトがフライングで失格したレースを、男子100メートルでは大会史上最年少となる21歳で制した。さらに9月のダイヤモンドリーグ・ブリュッセル大会200メートルに19秒26で優勝。ボルトの世界記録に0・07秒と迫る歴代2位の快記録だった。

 「ボルトを倒すとしたらブレイク」という声も多い。同じクラブということもあり、今季は直接対決を避けてきた。その2人が五輪代表権を懸けて2種目で激突する。オリンピック本番にとっておきたい対決が、ひとあし早くキングストンで実現する。

 全米五輪トライアルは、“一発勝負”の緊張感がある。五輪金メダリストも世界記録保持者も過去の実績はまったく考慮されず、この大会の上位3人が自動的に代表に決定する(ただし、五輪A標準を突破していることが条件)。

 米国は五輪金メダル候補が多数出場するが、男女の短距離はやはり面白くなりそうだ。

 男子では昨年の大邱世界陸上で100メートル、200メートルとも2位だったウォルター・ディックス(26=米国)、2004年のアテネ五輪100メートル金メダリストのジャスティン・ガトリン(30=米国)、100メートルで9秒69の世界歴代2位を持つタイソン・ゲイ(29=米国)らが登場する。

 ガトリンは2006年から2010年まで、ドーピング違反により出場資格を停止されていた選手。8年ぶりの五輪出場を目指す。故障に苦しんだゲイは6月9日のダイヤモンドリーグ・ニューヨークシティ大会で、約1年ぶりにレースに復帰して10秒00でB組1位。向かい風1・5メートルを考えれば、9秒8台の価値はある。

 女子ではアリソン・フェリックス(26=アメリカ)が、ロンドン五輪で金メダルを狙う200メートルの他に、100メートルに出場するのか、400メートルに出場するのかが注目されている。

 昨年は400メートルと兼ねて、世界陸上だけでなくダイヤモンドリーグにも出場していたが、スピードが低下していることを感じ、今季は100メートルに多く出場している。

 だが、オリンピック本番の出場種目を「100メートルにするか400メートルにするか、まだ決めていない」と、5月のゴールデングランプリ川崎に出場した際には話していた。

 100メートルに出場すれば大邱世界陸上金メダルのカーメリタ・ジーター(32=米国)と、400メートルに出場すればベルリン世界陸上優勝のサンヤ・リチャーズ・ロス(27=米国)と対決することになる。【6月後半の主な陸上競技大会】6月21日~7月1日:全米五輪トライアル(ユージーン)6月28日~7月1日:ジャマイカ選手権(キングストン)