陸上の全日本実業団対抗が21~23日の3日間、福岡市の博多の森陸上競技場で開催される。ロンドン五輪代表22人がエントリー。種目によっては日本選手権さながらの激しい戦いになりそうだ。シーズン前半の不調から再起を期す選手もいれば、記録を狙う選手もいる。技術の達成度をチェックするなど、個々のテーマを持って臨む選手も多い。

 ロンドン五輪代表が激突するのが女子1万メートル。吉川美香(28=パナソニック)と福士加代子(30=ワコール)の対決が面白くなりそうだ。

 日本選手権ではスピードに勝る吉川が終盤でスパートして快勝したが、ロンドン五輪では国際経験に勝る福士が10位と先着した(吉川は16位)。ハイペースで振り切ろうとする福士に、吉川が日本選手権のように終盤までつけるかどうかがポイントになる。

 注目されるのは1500メートル日本記録保持者の小林祐梨子(23=豊田自動織機)が参戦すること。5000メートルでは2009年の世界陸上で決勝に進出したことがあるが、今季は五輪代表入りに失敗。その後1万メートルに出場して32分21秒03と今季日本8位のタイムで走った。2レース目で五輪代表コンビにどう挑むか。

 男子短距離には新旧の五輪代表が多数出場する。

 200メートルには高平慎士(28=富士通)と高瀬慧(23=同)、金丸祐三(25=大塚製薬)の3人がエントリーした。金丸は400メートル代表なので専門外となるが、高平と高瀬の“富士通対決”はレベルが高い争いになりそう。日本選手権は高瀬が優勝したが、ロンドン五輪はともに準決勝に進出。日本選手権で高瀬が出した20秒42の今季日本最高を上回りたい。

 100メートルは日本選手権4連勝中の江里口匡史(23=大阪ガス)が優勝候補。ロンドン五輪では4×100メートルリレーの2走で日本の5位入賞に貢献した。

 北京五輪4×100メートルリレー銅メダルメンバーだった塚原直貴(27=富士通)と末続慎吾(32=ミズノ)も出場する。今季の塚原は故障がちで、日本選手権5位で五輪代表に届かなかった。今大会で雪辱を期している。

 注目は3シーズンの休養から今季復帰した200メートル日本記録保持者の末続。5月の東日本実業団では10秒83だったが、向かい風も2.8メートルと強かった。どこまでタイムを上げてくるか。

 長距離2種目のロンドン五輪代表だった佐藤悠基(25=日清食品グループ)は5000メートルに絞って出場する。日本選手権優勝者の出口和也(24=旭化成)もラスト勝負に強いだけに、目の離せない戦いになりそう。

 注目選手が多いのは1万メートルの方だ。宮脇千博(21=トヨタ自動車)ら27分台の記録を持つ日本人選手が5人出場する。そこに“山の神”柏原竜二(23=富士通)と、マラソン五輪代表だった山本亮(28=佐川急便)、5000メートルが専門の上野裕一郎(27=エスビー食品)らが加わる。

 ラスト勝負になったら上野や深津卓也(24=旭化成)が有利。柏原や宮脇は、ハイペースに持ち込んで早めに振り切りたい。

 記録的に期待できるのは男子1万メートル競歩。50キロ競歩でロンドン五輪10位と健闘した森岡紘一朗(27=富士通)をはじめ五輪代表が5人出場する。森岡の持つ39分07秒84の日本記録に挑戦する。

 日本記録保持者でロンドン五輪代表を逃した男子棒高跳びの沢野大地(32=富士通)、女子400メートルの千葉麻美(26=東邦銀行)らの巻き返しも注目される。