11月に入ると本格的なロードシーズンに突入する。学生駅伝の第2ラウンドである「全日本大学駅伝」(名古屋~伊勢)が11月4日に行われる。

 11月4日の全日本大学駅伝は三大学生駅伝の第2戦。区間と距離は第1戦(10月8日)の出雲全日本大学選抜駅伝が6区間44・5キロと短いのに対し、全日本は8区間106・8キロと伸びる(来年1月の箱根駅伝は10区間217・9キロ)。昨年優勝の駒大と箱根駅伝優勝の東洋大、2年前の学生駅伝3冠の早大が激突する。<駒大>

 優勝候補筆頭は駒大と言われている。1万メートル上位8人の平均タイムは28分30秒を切り、学生チームでは史上最速。実業団上位チームとも遜色ないレベルになっている。

 昨年は3区の油布郁人(3年)でトップに立つと、4、5、7区で区間賞を獲得。最終8区で柏原竜二(当時東洋大4年、現富士通)に1分以上差を詰められたが、危なげなく逃げ切った。

 今年も前半区間に油布、上野渉(4年)、攪上宏光(4年)、村山謙太(2年)といったスピードランナーを惜しげもなく投入する。普通に力を発揮すれば前半でトップに立つはずだ。

 そして窪田忍(3年)が最長区間の8区(19・7キロ)に登場するだろう。窪田は昨年こそ柏原に差を縮められたが、今年の日本選手権1万メートルで5位に入賞。スピードでは油布や村山に劣るが、10キロ以上の距離の安定感ではチーム一番の選手である。

 世間では箱根駅伝の強豪と認識されている駒大だが、全日本は優勝9回で、箱根の6回よりも多い。ここで優勝して、最終戦の箱根駅伝に弾みをつけたい。

 不安要素は出雲で5位と大敗したこと。アンカーの窪田は区間2位(日本人1位)ときっちり走ったが、1~3区に起用した村山らスピードランナーたちが区間9~11位とまったく持ち味を出せなかった。

 箱根駅伝まで残り2カ月。その期間のプレッシャーを少なくするためにも、全日本で立て直しておきたい。<東洋大>

 東洋大は大黒柱の柏原が卒業したが、箱根駅伝で圧倒的な勝利を収めたメンバーのうち6人が残っている。

 そのなかから設楽啓太・悠太の双子兄弟が今季大きく成長。1万メートルで弟の悠太が28分12秒82、兄の啓太も28分15秒90と柏原の持っていた東洋大記録を大きく上回った。柏原世代が作り上げた“練習でもレースでも攻める”チームカラーに、トラックのスピードという要素が今季のチームには加わった。全日本では設楽兄弟のどちらかを8区に起用するだろう。

 だが、20キロを59分前後で走る選手が育っていれば8区に置く可能性もある。そうなれば前半区間に兄弟を投入して駒大をリードすることもできるのだ。駒大の窪田と、後述する早大・平賀翔太の8区は確定的。設楽兄弟を8区にぶつけて勝負をするか、それ以前に投入してリードを奪う戦略をとるか。東洋大の選手起用が注目される。<早大>

 早大は2年前に学生駅伝3冠を達成した。今回も、全日本優勝メンバーが5人残っている。中心となるのは大迫傑(3年)と平賀翔太(4年)の2人で、安定感があり、9月の日本インカレ1万メートル日本人1位だった平賀が8区を走るのは確定的だ。

 日本選手権2位と1万メートルでロンドン五輪代表にあと一歩と迫った大迫が、前半区間でリードを奪えば上位で平賀にタスキをつなぐことができる。

 全日本大学駅伝の予選を通過できなかった青学大が出雲で勝ったように、現時点で絶対的に強いと言いきれるチームはない。トラックで記録は出せても、安定した強さになっていないのが今の学生長距離選手である。

 脇を固める選手たちも含め、大会にピークを合わせられたチームが勝つ。